日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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織田信長が実は女だった、という歴史小説。

女だからこそ、天下統一ができる、という主張が面白かった。

天下統一が自分にしかできないのは、心がけの問題だ、と信長は言う。
男は泰平の世を作りたくて戦をするわけではない、戦のために戦をする、だから適当な落としどころばかり探りながらずるずる戦を長引かせてばかりいる、と。
斉藤道三はそういわれて、たしかに、自分は、ただ己の証しを立てたい名前を残したいと戦っているだけだ、と思いあたる。

信長は、民がのぞんでいる泰平の世を望み、そのために戦をし、とことん勝ち抜く事を望む。
戦で名をあげようなどと思っていないから、刀や槍ばたらきでの個人の武功に頓着せず、集団として戦に強くなる方法を思いつき、実践できる。

という流れは面白かったし、信長に関する史実を、実は女だったという観点で描かれた逸話たちはパロディのように楽しめるが、信長がヒステリック過ぎて読んでいて疲れてしまうし、「男とは」「女とは」論が、やや偏ってる感じがする。

この著者の小説は、いつもくたびれたおじさんが、たらたら文句言ったりひねくれたりしながらも、目覚めて最後には再生する爽快さがあるが、主人公が女性のこの話では、信長は最後に自分が本当に求めたものが何かを知り、満足げだが、読んでいる方は、それで満足なのか?というラストであまりすっきりしなかった。
「こんな恋愛小説を待ち焦がれていた。わたしは、飛行機のなかで、涙がとまらなくなった・・・・・・」児玉清氏、絶賛!!という帯に惹かれて購入したが、私は全く泣けなかった。恋愛に対しては一人一人価値観が異なり具合が激しいからなのか、恋愛小説で「これはいい」というものにまだ出会っていない気がする。

45歳で亡くなった翻訳家で詩人の四条直美が娘に遺したテープ。
そこに語られる、1970年大阪万博の夏。直美はそこで、人生の宝物というべき恋をする。
その内容を娘の婿が起こした、という形の小説。

婿は娘と小学生からの付き合いで、子供時代の婿が見た、直美の描写がなかなか素敵だ。
祖父はA級戦犯という旧家出身のお嬢様でありながら酒も煙草も嗜む不良で、多くの人に愛されかつまた同じくらいの数の人に憎まれ、気に入らない相手に対しては批判や攻撃はせずただほんの数秒間目を見つめるだけ。子供たちを笑わせる冗談を心得、古い外国の曲を流暢な英語で歌う。

テープで語られる23歳の直美は、親に従って許婚と結婚する前に、自由な時間、自分はこれがしたと言い得るだけの何かを探す時間を求めて、両親の反対を押し切り、大阪万博のコンパニオンをやり、運命の相手、臼井礼と出会う。
親に会わせるほどの仲になるのだが、臼井が隠していたある事実を知り、もう付き合えないという短い手紙を残して直美は逃げ出し、恋は終わる。

しっとりした語りは読みやすく美しい。
女性が思うように生きることが難しかったり、戦後の復興、大阪万博の熱狂ぶりなど、時代の雰囲気がよく書かれており、直美の人生に対する沁みるような言葉たちも良いのだが、ストーリーがすごく良いというわけではなく、なんとなく雰囲気がいいなあ、という感じで最後まで全く泣けなかった。

「これでお終いだ、もうどうにもならない。私自身、何度そう考えたかしれません。でも、運命というものは私たちが考えているよりもずっと気まぐれなのです。昨日の怒りや哀しみが、明日には何物にも代え難い喜びに変わっているかもしれないし、事実、この人生はそうしたことの繰り返しなのです」

海の美しい田舎で、少年が過ごした夏休み。そこで起こる殺人事件。
事件のトリックや動機はあまり納得がいかず、ミステリーとしてすごく面白い!わけではないが、少年と湯川准教授のやりとり、夏らしい描写、偏屈な少年が学ぶ意味・科学の楽しさを知り、負わされた重い枷に対して「いろいろなことをいっぱい勉強して、それからゆっくりと答えを探そう。僕は一人ぼっちじゃないんだから。」と思えるようになるラストが爽やかで良い。

少年の伯母一家の経営する旅館の客が、変死体で見つかる。
客は元警視庁の刑事。何のゆかりもないこの土地に、何をしに来たのか?なぜ殺されたのか?
客がこの町にやってきた理由を、東京で刑事たちが少しずつ明らかにしていく過程も、読み進むたびに手がかりが増えていくのが快感。

科学についての湯川の言葉。

「人類が正しい道を進むためには、この世界がどうなってりうのかを教えてくれる詳しい地図が必要だ。ところが我々が持っている地図はまだまだ未完成で、殆ど使い物にならない。だから二十一世紀になったというのに、人類は相変わらず間違いをしでかす。戦争がなくならないのも、環境を破壊してしまうのも、欠陥だらけの地図しか持ってないからだ。その欠けた部分を解明するのが科学者の使命だ」

それを「僕には関係ない」と言う少年に対してさらに、人類というと大げさに聞こえるが、人が何か行動するときの選択に科学が必要だ、と教える。
たとえば海に行く予定があれば晴れるかどうか天気を知りたいだろう、と。
その天気予報だって、地元の漁師が天気を知るのだって、科学だ。理科の勉強が役に立たないなんて、天気図の見方を覚えてから言うべきだ、と。

「理科嫌いは結構だ。でも覚えておくことだな。わかんないものはどうしようもない、などといっていては、いつか大きな過ちを犯すことになる」

そして物語ラストで、少年にかける言葉。
「どんな問題にも答えは必ずある」
「だけどそれをすぐに導き出せるとはかぎらない。人生においてもそうだ。今すぐには答えを出せない問題なんて、これから先、いくつも現れるだろう。そのたびに悩むことには価値がある。しかし焦る必要はない。答えを出すためには、自分自身の成長が求められている場合も少なくない。だから人間は学び、努力し、自分を磨かなきゃいけないんだ」


★★★☆☆真夏の方程式-----東野圭吾
「告白」に比べると、パンチ不足。読んでいる間は続きが気になって先を急ぎたくなるが、読み終わってみるとあまり印象に残らない。

高級住宅街に隣り合う遠藤家と高橋家。
背伸びしてここに一軒家を建てた遠藤家の一人娘は、私立中学受験に失敗し、毎晩のように癇癪を起こし、色々なものを投げつけたり暴言三昧、親はそんな娘を持て余している。高橋家はエリート医師に美人妻、家を出ている長男は医大生、同居する2人の姉弟はどちらも名門校に通う優等生。
この2家族と、近所に住む小島さと子。
物語は彼らの視点で進んでゆく。
2家族と、それを物見高く観察する小島さと子を交互にちりばめ、語らせ、物語を進めるという構成は面白い。

ある夜、高橋家で、妻が夫を殴って殺害するという事件が起きる。
何の問題もなさそうに見えた家庭で、何が起こったのか?
事件当日、姉は外泊しており、弟は事件以来、行方不明。
真相がわからないまま、様々な視点で、それぞれの家庭の物語が少しずつ語られる。

登場人物たちは、みんな問題がある。
みんな自分勝手だったり、事なかれ主義だったり、読んでいて腹立たしいシーンがいくつもあるが、全員、善人でもなければ悪人でもない。
それぞれ事情を抱え、それぞれができる精一杯をやって毎日を生きている至って普通の人たち。
そういう普通の家庭に起こりうる、問題を描いた作品、なんだろうか?

自分の都合しか考えていないと思っていた小島さと子についても、ラストでは見違えるような親切な態度で、それについて
「冷静に考えると、こちらが自分の知っている、ひばりヶ丘で一番頼りになる小島さんちのおばさんだった。」
と記述されている。
誰でも、悪意を持って人に接するわけではなく、それぞれの都合で生きていて、その都合によって、他人に良くできたり、できなかったりする、という事なのだろうか、と思った。


彼氏と大喧嘩の果てに薬の過剰摂取で精神病院に強制入院となった主人公・明日香。目が覚めたら体が拘束されていて、そこから入院までの経緯を思い出したり、病院内の観察したり、徐々に状況がわかってくる運び方が上手。
短くポップな文体が無駄ない描写で、薄くてさらりと読めるが、院内のいろいろな種類の患者やナースの様子も手広く描かれ、内容は見た目より充実している。

自分がここにいるのは間違いで一刻も早い退院を願う明日香だが、前の旦那との離婚話やそこからの鬱など、なかなかハードな人生で、そういった過去を見つめなおし、ラストでは再生への一歩を踏み出す、というところまで展開する。

コンパクトにまとまっていて読みやすい。
が、軽やかな文体で気持ち悪い事を書いてあるのが、どうも合わなくて読んでるとゾワゾワしてしまった。
冒頭のゲロでうがいをするシーンはその最たるもので、かなり気分悪くなるけど、斬新で秀逸ではある。
ユルい感じの中華ファンタジー。
「しゃばけ」「精霊の守り人」と並べて三大ファンタジーと銘うってたが、他の2つに比べると密度が薄い感じで。物足りない。
でもその薄さがユルくて楽だ。

主人公からしてユルい。
唐の時代。
エリート役人の息子・王弁は、幼い頃から英才教育を受けて育つが、働かなくても親の金で生きていけると気づいて、何もしなくなってしまう。
働かず学ばず、毎日庭を眺めたり酒場に行ったり 悪い友達と遊行三昧でもなく女の影もなく1人ひたすらだらだら過ごす日々。

その人生が変わるのは、親の使いで、山に住んでいるという仙人に、贈り物を届けに行った時。
仙人なんているもんかと言う王弁の前に、うらわかい美少女が現れ、僕僕と名乗る。
この少女が実は仙人で、姿を自在に変えたり、病気を治したり、そしてやがて旅に出る僕僕に、王弁も付いていく。

前半は退屈だが、旅に出てからは、物語がリズムに乗り、読みやすくなる。

旅先で、様々な神様や仙人に出会い、時の皇帝・玄宗(楊貴妃に血迷う前の名君だった頃)も出てくる。
歴史や神様についてのわかりやすい解説が魅力。

僕僕は、自分を「ボク」と呼び、飄々として無敵で、王弁が抱く恋心にも「そういうのは大事」だが「食べたりするのと同じ」という冷静な態度。
そのくせ後半では甘える場面もあり、いかにもなツンデレキャラがやや鼻につきつつも可愛いと思う。

王弁が温泉で僕僕にからかわれるシーンが、漫画っぽい。
・・・と思ったのでそのシーンを漫画にしてみた。

僕僕先生1
僕僕先生2
僕僕先生3
漫画家・一条ゆかりのエッセイ本。

この人の漫画は、割と好きで何冊か持っているが、エッセイは初。
漫画のあとがきで、ざっくばらんで自分に正直な文章を読んで、そんな感じをイメージして買ってみたら、まさしくそんな感じだった。
話言葉で書かれた文章は、だらだら感があって読みにくい所もあるが、一条節とも言うべき、切れ味が楽しめて面白かった。

デビュー40周年を記念して、郷里を訪ねるテレビ番組の企画で、一条ゆかりは、自分の根っこにあったトラウマと、そこから生まれた欲望について、気付く。
それをテーマに1冊、一条節が続くのだが、彼女の根っこにあるのは
「自分を好きになりたい」
という想い。

自分を好きになり、認めるために、壮絶な努力をする。
漫画を書くのも、決して手を抜かない。
それは人に負けたくないからではなく、自分に負けないため、自分を認めて好きになるため。
こういう努力ができる人だからこそ、今日の成功があるのだな、と思わせられる力強いエッセイ。
普通の人は、自分を好きになりたいと思っても、そのためにここまで壮絶に努力できない。

『自分の人生を判定するのは他人じゃなくって自分。いつも言っているセリフだけど「自分を幸せにできるのは自分だけ、他人はその道具を貸してくれるだけ」って話です。』

女が嫌い、というくだりが面白かった。
女性の「私なんて・・・・・・」は、「そんなことない、可愛いよ」というフォローを期待した本心では褒めてほしいというリアクション。
それがうっとうしい!と著者は言う。

『でも正直者の私としては、「私なんて、デブだし」と言われれば「うん、うん」と肯定したくなるし、「ぐずだし」って言われたら「ほんとにぐずだねえ」と言いたくなるのよ。それを我慢するのは公卿です。しかも私、もっと余計なことまで言いたくなるのよ。「うん。あなた、見掛けはブスだけれども、性格はもっとブス」とか・・・・・。』

会社の同僚が「面白いよ!」と貸してくれた本。
表紙はポップな絵柄だったが、内容は「面白おかしい」どころでは、ない。
ストーリーはものすごく悲惨なのに、それが面白く書かれていて、読んでいて複雑な気持ちに。

『いま、わたしにとって、生きることは、はっきり言ってチョー苦痛。困難山盛り。一瞬一瞬、ひとつひとつの動作、エブリシング、たたかい。
ひとりの人間が、たった一日を生きることが、これほど大変なことか!』

治療法もない稀な難病にかかり、全身の炎症を薬で抑え、薬の副作用とも戦う、自称「難病女子」の、発病からの怒濤の日々を綴った本。
過酷な病状や、麻酔なしで筋肉を切り取るという凄絶な検査、社会システムとのたたかい・・・ストーリーは悲惨だが、英語混じりでポップだがストレートで力強い文章は、読む人を楽しませつつ真剣にさせる
世に知られない難病患者の苦労や困難、家族友達患者や医師看護士たちとの病院での人間模様。

絶望はしない、と決めた著者の強い意思と行動に、人間の強さや尊さを思わされる。

ただ、同じトーンの文章がだらだら続く感じもあって、途中から中だるみしてしまい、後半は読むのがちょっと億劫になってしまった。
のどかな昼下がり、主人公がいた新宿の公園で突然の爆発。
誰が、何の目的で?
主人公は、ただのくたびれたアル中の中年男かと思いきや意外な過去があり、その過去がからんで青春の匂い。

あれよあれよと登場人物がつなかったり、主人公が真相にたどりつく過程がご都合主義な感もあり、結末は想像できたり、台詞まわしが不自然だったり、リアリティーには欠けていても、それらは、この本の魅力「いかにもなハードボイルド」を楽しむ邪魔にはならずむしろスパイス。

「のんき」と評される主人公の乾いた感じ。
のんびりだるそうに見えて自分の哲学を曲げない、アル中で全てを諦めきってどうでもよさそうで最後の筋を通していて、礼儀正しく、人を大切にし、呑み込みが早く、知識豊富で行動力があり、時々抜けてる、という魅力。

主人公は、わずかな手掛かりですぐ何かを察し、読者は置き去り。
こいつはどこで何に気付いていま何を調べてるんだ?と関心もったまま読み進む。
お約束のように、この男に惚れる女との、これまた渋い恋愛模様。

奇妙で渋い中堅ヤクザ組長の浅井とのからみも、よい。
わざとらしいくらいかっこいいセリフが恥ずかしくない。

事件の真相が薄皮を剥ぐように明らかになるミステリー的な楽しみと、この男たちの渋さを堪能するハードボイルドな楽しみと、を楽しめる名作。

主人公が、バーで客に出すために作るホットドッグが実に美味しそうで、家でも作ってみた。美味しかった。
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