日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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キャラ:◎

日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
京大農学部休学中5回生、という身分の愛すべき若者、というか、バカ者が主人公の青春小説。

彼の生活は基本的に、女っ気ナシ。
作中の表現を借りて表現すると、

『あらゆる意味で華がなかったが、そもそも女性とは絶望的に縁がなかった。(略)
しかし、私が女ッ気のなかった生活を悔やんでいるなどと誤解されては困る。自己嫌悪や後悔の念ほど、私と無縁なものはないのだ。かつて私は自由な思索を女性によって乱されるのを恐れたし、自分の周囲に張り巡らされた完全無欠のホモソーシャルな世界で満足していた。類は友を呼ぶというが、私の周囲に集った男たちも女性を必要としない、あるいは女性に必要とされない男たちであって、我々は男だけの妄想と思索によってさらなる高みを目指して日々精進を重ねた。』

ハイで皮肉で自虐的な文章が、楽しい。
どう見ても、本当は彼女が欲しいのに、それを表では認めず、見栄っ張りで頭でっかちなムサ苦しい大学生活。
著者が京大の大学院在籍中の作品であり、サークル、飲み会、下宿、研究室・・・・と、その描写は、実にリアル。
私がいた仙台の大学の理学部での生活を彷彿させる。

主人公はしかし、3回生の時に、同じクラブの後輩「水尾さん」とつきあっていた。
そして、フラれた。
決して未練などない、と書いてあるけど、その行動はどう見ても、未練たらたら。
ストーカーまがいの行動にも「これは研究」と理屈をつけて、正当化しつつ、彼女に恋する新しい男とアホな戦争をして、似た者仲間たちと妄想をくりかえし、反クリスマス同盟なぞ結成して・・・・・

で、結局何が言いたいの?というと、水尾さんへの恋と失恋と再生の物語、なのかしら。

アホな生活を送れば送るほど、ちりばめられる水尾さんの描写が、愛にあふれていて切ない。
水尾さんは回想シーンでしか出てこないのだが、彼の回想する水尾さんは、とにかく愛らしい。それが切ない。

『駅のホームで歩行ロボットの真似をして、ふわふわ不思議なステップを踏む。』
『猫舌なので熱い味噌汁に氷を落とす。』
『きらきらと瞳を輝かせて、何かを面白そうに見つめている。』
『何かを隠すようにふくふくと笑う。』

何がファンタジーなのかというと、主人公の妄想世界が、現実アホ世界と折り重なって、境目がよくわからなくなるドサクサに、主人公は二両編成の叡山列車に乗って、水尾さんの夢の中へまぎれこむ。ごく自然に。
ただそれだけなのに、この淡い夢の世界の印象は、あとまで尾を引いて、心に残る。

実はこれは二度目の再読である。一度目は★3つくらいかしら、と思っていたが、再読したらけっこう面白かった。本の印象は、その時ドキで変わるって事でしょうかね。


コメント
この記事へのコメント
こんばんは。

アホ世界と現実が境なくはいっていくのは筆者の力なんでしょうね。抵抗無くすらすら世界に入っていけますものね。

ところで理学部だったのですね。やっぱり小説になるほど女っ気のない世界なんでしょうか?
2008/10/07(火) 01:18 | URL | kbb #-[ 編集]
コメントとトラックバックありがとうございました。私もトラックバックさせていただきました。

「夜は短し、歩けよ乙女」がすごく評判のようで読んでみたいのですが、文庫になってないので文庫が出ていたコレを買ってみました。このハイな文体は賛否両論あるようですね。私はけっこう面白いと思いますが。

はい、理学部は女っ気なかったです。私は化学系でしたが100人くらいのクラスで女子は10数人。それでも工学部よりはマシで工学部では5人を切ってたようです。
キャンパスは山の中にあり、閉鎖感抜群、研究室にこもった毎日、なかなか面白い環境でした~。
2008/10/07(火) 14:18 | URL | homamiya #-[ 編集]
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