日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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ストーリー:◎

●女子大生<私>の母校の後輩が屋上から転落して亡くなった。それは事故? 自殺? あるいは…??
というストーリーだが、上の一文から想像されるようなミステリーでは、ない。
謎解きは非常にゆっくりだし、解かれてみれば、「何だ、そんな事か」という程度。
味わいたいのは、その過程で、<私>が出会う出来事、考える事、友人や謎解き役の噺家・円紫さんからの言葉…そういう一つ一つが、水が染みるように読む人の心にじんわりくる。

“紫のひともとゆゑに武蔵野の草はみながらあはれとぞ見る”
という古今集の歌が、あるお菓子の箱に書いてあったという話がでてくる。
後で、<私>が円紫さんを自分の生まれ育った町に連れて来ることになるのだが、そこで円紫さんのこのセリフ。

「もう何年かすると、あなたもきっと誰かをここに連れて来るのでしょうね。そして自分の歩いた道を教えてあげる。そのとき、誰かは、<<ここはどこの道よりも素敵だ>>と思うでしょう。一本の木、一本の草までね」

<私>は体がしびれる。
読んでた私も体がしびれ、思わず、本を閉じて反芻する。

北村薫の話は、決して美しいだけの物語ではない。
人の嫌な面や弱い部分も書かれているし、眉をひそめるようなつらいシーンもある。
ドラマチックに、都合のよい事だけが書かれているのではなく、物語のあくまで一部分として、上述のような珠玉のシーンが登場するのだ。
実人生だって、よいことばかりではないけれど、悪いことばかりでもない、そして時には円紫さんの言葉のような心ふるえる出来事もある。
北村薫の本は、それを思い起こさせてくれる。

「秋の花」は、北村薫の「空飛ぶ馬」「夜の蝉」に続く<私>と円紫さんシリーズの一つだが、それぞれ独立した話なのでこれだけ読んでも問題ない。

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