日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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キャラ:◎ ストーリー:○

グラスホッパーに続く、2作目の伊坂幸太郎作品。
コレは面白かった!グラスホッパーはイマイチだったけど、あそこであきらめなくてよかった!!

5つの短編。それぞれの中での起承転結がきっちりと書かれているだけでなく、5つの物語が連動し、ある物語で「なんだろう?」と疑問に思った事が、別の物語の起承転結の中でうま~い具合に明らかにされる、というつなげ方も見事。

この本の何よりの魅力は、破天荒な男、「陣内」。
わがままとも無神経とも言えるほど、自分だけの正義で動く男。友人いわく「あいつは常に何かを主張している」。
著者は、家裁調査官に取材したおかげで、当初考えていたのとちがう話になった、とあとがきで書いていたが、陣内の強引な、でも愛すべきキャラクターと、陣内が就く職業、「家庭裁判所の調査官」の仕事がうまくマッチして、陣内が発するこの仕事に対する考え方など、ストーリー運びにあわせて上手に披露され、面白い。

5つの短編は、年代が前後する。短編の順番と、その時の陣内の年齢、その短編の主人公(語り手)をまとめてみた。

タイトル陣内の年齢語り手
バンク18or19歳(大学生)陣内の大学の友人、鴨居
チルドレン31歳(家裁調査官)家裁の後輩、武藤
レトリーバー22歳(大学生)陣内の友人・永瀬の彼女、優子
チルドレンII32歳(家裁調査官)家裁の後輩、武藤
イン19or20歳(大学生)盲目の青年、永瀬

皮肉でコミカルな文が小気味よく面白くて、爆笑ではなく、いちいち「にやり」と笑ってしまう。

●銀行強盗の人質となり、緊迫した空気。陣内が見事な歌声でそれを和らげる。
「前に観た映画で、同じような場面があったんだ」と言うから、友人・鴨居も、当然、繊細で美しい映画なんだろうと思い、「何の映画だ」と訊ねると・・
「確か『死霊のはらわた』の二作目だ。『死霊のはらわたII』だったかな」

ここは、にやり、でしょう。



陣内の、無茶苦茶だけど、好ましいなあと思ってしまう名台詞の数々・・・。

●「これは絶対にうまくいく片想いなんだよ」
「世の中に『絶対』と断言できることは何ひとつないって、うちの大学教授が言ってたけど」
「『絶対』と言い切れることがひとつもないなんて、生きている意味がないだろ」

●盲目の青年・永瀬に、現金を手渡したオバさん。善意だけど、過剰な同情でもある。それを永瀬の彼女は憂鬱に思う。しかし、陣内は
「何で、おまえがもらえて、俺がもらえないんだよ」
盲目だからだろう、という説明にも
「そんなの、関係ねえだろ」「ずるいじゃねえか」
彼女には、この「関係ない」が心地よく響く。ここだけ読むとヒドい人物に見えるかもしれない。ヒドい事はヒドいのだが、でも、陣内は、いい。

家裁調査官についての記述。

●飲み屋で「少年法は甘い」「調査官は少年を甘やかしている」とからむオジさんたちに、陣内は、少年は一種類じゃないから、いちがいに決めつけるな、と反論。それでも
「駄目な奴はどうやったって駄目なんだよ。更生させるなんて、奇跡みたいなもんだな」と言われるが、
「それだ」「そう、それだ」
「俺たちは奇跡を起こすんだ」
「少年の健全な育成とか、平和な家庭生活とか、少年法とか(略)全部嘘でさ、どうでもいいんだ。俺たちの目的は、奇跡を起こす事、それだ」
・・・・かっこいい。
「そもそも、大人が恰好良ければ、子供はぐれねえんだよ」

そう言った陣内が
「奇跡?そんなもの起こるわけないだろうが。適当に少年の調査をして、報告書を書いて、どんどんやっていかないとキリがねえよ」とアッサリ転換。自分の発言に責任を持たないのは、日常茶飯事だ、というミニオチ付き。

だけど、陣内は奇跡を起こす。4編目の「チルドレンII」で、このセリフを実現する。
「チルドレンII」のこの奇跡と、5編目「イン」で、それより前の話で持たせられたある疑問の回答が示されるところが、いちばん好きだ。

2006年に源孝志監督により映画化されているが、DVDが出ている。映画観た方の感想見ると、映画も面白そう。



コメント
この記事へのコメント
homamiyaさん

伊坂さんといい、北村さんといい
言葉が生きていると感じます。

この作品、大好きです。
小説も映像もどちらもです。
陣内の、ハチャメチャそうに見えて
芯をもった男の存在感が印象的です。

小説の味を、上手く映像化していました。
ボクはDVDで観ましたよ。

2008/06/26(木) 22:07 | URL | 本命くじら #89zBIK8s[ 編集]
DVDありました!
見てみたいです
チルドレンは、陣内の味がすごくよいですよね、どう映像化されてるのか興味がある
北村薫も伊坂幸太郎も、味わいは違うけど、どちらも言葉の使い方に、コトバへの愛を感じます。
2008/06/27(金) 00:40 | URL | homamiya #-[ 編集]
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2008/06/26(木) 21:54:31 | こじつけ☆読書ろく
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