日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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ストーリー:◎

大学時代、本屋さんで短期バイトをしているときに、職場の先輩がススメてくれた1冊。即効でハマって、今では大好きな1冊に。

「日常生活におけるささやかな謎のミステリ」という分野の先駆者ではないだろうか?
殺人など起きない。主人公の女子大生の<私>が、ふと目にしたもの、耳にしたことで、「不思議だなあ」と思った出来事を、探偵役となる噺家が、あざやかに推理する短編集。

現場検証も証人喚問もない、ただ<私>の話だけが材料となる謎解きだから、「うーむ、ちょっとこじつけっぽい。それはどう見ても解答を知ってないと解けない謎では?」と思うものもあるが、
・赤頭巾
・空飛ぶ馬
の2編は、そんなこじつけを疑う気にもならないほど、ストーリーと謎解きがうまく融合していて、本当に見事!!

そう、このストーリーとの融合が、この本の魅力。

大学生にしてはえらくウブでイイ子ちゃんで、女になる事に頑なな<私>。
父の心からの許しなしには口紅は決してひかない、だとか。
「街ですれ違うカップルが美しく見えないんです」「抑制がなくてぎらぎらしているでしょう」とか言っちゃうような。

これに対し、噺家の方は大人だけあって、つらいことも楽しい事も見てきただろう上で、それでいて実に優しい人柄。

落語で『夢の酒』『樟脳玉』という噺があり、夫に恋する若妻、死んだ恋女房を慕う夫が出てくるのがあるらしい。彼らはいずれも手放しの愛情で相手を慕う。
この噺家がこれをやると、<私>は、泉鏡花の「天守物語」で最後に近江之丞桃六が「泣くな、泣くな、美しいひとたち、泣くな」と出てくるところを思い出すという。
「この言葉にこめられたような気持ちで『夢の酒』や『樟脳玉』をやってらっしゃるんだろうって思ったんです」

泉鏡花の「天守物語」は読んだ事ないが、波津彬子が漫画化したものは見たことがある。
姫路城の天守に住む美しい妖怪の姫君と、若侍の恋物語で、人間たちに追い詰められ、2人して死のうとするそのときに、唐突にあらわれて2人を救ってくれるのが近江之丞桃六。
手放しの愛情などという滅多に持てないものを持った人たちに対するあたたかいまなざしが、共通しているということかしら。

『赤頭巾』『空飛ぶ馬』が連続しているのがいい。
『赤頭巾』で、<私>の幼いころからの憧れを、醜い男女の姿が台無しにした。
噺家の推理は、私に残酷な解答を示した。
で、次の『空飛ぶ馬』で、時はクリスマス、働き者の近所の酒屋の若旦那が見つけた遅い春、見ていてこっちが幸せになるようなカップル。
酒屋から幼稚園に寄付された木馬が、一晩だけ姿を消した。まさか空を飛んでどこかへ!?
その真相はすごくあたたかく、「そこには、純粋で真摯な思いをどこまでも守ってやろうといういたわりがあった」。

噺家のセリフ
「-どうです。人間というのも捨てたものじゃないでしょう」
この人はいつもこれが根底にあって、やさしい。だから落語もやさしいのだろう。

頑な<私>が、『空飛ぶ馬』で最後に少しほどける。そんな<私>が、どんな大人になってゆくのか?シリーズものだから、続きが楽しみ。

また、作中で、いろんな本や落語が紹介されて、それが新たな世界を広げてくれる。私はまだ落語には踏み入れてないが、本はここで紹介されて手にしたものも多い。

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