日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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文:◎

コトバが心地よいから、これはよい文章なんだろう。
慌しい通勤電車の中で読んでも、ゆらゆら揺れる水に、たゆたいながら、のんびり読んでいるような気になる。

「海にむかう水が目のまえを流れていさえすば、どんな国のどんな街であろうと、自分のいる場所は河岸と呼ばれていいはずだ、と彼は思っていた」
という出だしの文から、私は好みだ、と思った。

●異国の河岸に繋いだ船で、レトロな家具に囲まれて暮らす主人公。日々、本を読み、レコードを聴き、クレープを焼いて、ただ一人で。時々、知人から手紙が届くか、船の持ち主に挨拶に行くか、郵便配達人が珈琲を飲みに来る以外は、人との交流はほとんどない。
河岸に停滞しながら、主人公はいろんな事を思い巡らす。ストーリーとしてはほとんど動きがないが、めまぐるしく展開する主人公の思考が、読み応えあり。

思考の始めは、本だったり、もらった手紙だったり、外から聞こえる太鼓の音だったり。犬走りをあえて翻訳すると、「キャット・ウォーク」と気づき、犬ではなく猫になる不思議に魅了されたり。
思考の芽が出たら、それを広げ、育て、たくさんのコトバで綴ってゆく。これは、時間と、豊富な語彙や、知識という広い畑があってできる事。書物や映画や経験が肥料となって、思考の芽は徐々に広がってゆく。
この広がりは、厳密な論理を無視した展開だったりもするが、それも面白い。

たとえば本を読んで、それを芽に、思考の畑を広げていけるには、どんな読み方をしたらよいのだろう?読み終わるための斜め読みではなく、時間つぶしのために読むのでもなく、読み終わった後の人生でその本の内容が畑の肥料となるような、そんな風に本を読みたい。


最後に。うらやましい!と思った一文。
「眠りをあやつる見えない手が、彼の午後をこうしてまた心地よくだいなしにしていく。」
「彼」というのが主人公。なんて贅沢な午後なんだ~!!

↓右は文庫。レビューが載っているのは左の方。

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