日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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古い茶箪笥の抽匣(ひきだし)から出てきた銀の匙。
それは、小さい頃、漢方薬を飲むのに、伯母さんがどこからか探してきて、終始薬を飲ませてくれていたもの。
この小さな匙を皮切りに、主人公の少年時代の思い出が著者の自伝風につづられる。

子煩悩でひょうきんで優しい伯母さんがあちこち連れて行ってくれたり、家が引っ越したり、学校に行ったり、友達が出来たり、いじめられたり、初恋したり。
そんな他愛も無い出来事の数々が並べられただけなのだが、著者の独特な感覚や、また描写もみずみずしく、子供の見た世界をやさしく初々しく表現していて、読むのが実に心地よい名作。

小さなおもちゃを愛したり、自然や鈴をいつくしむシーンも好きだが、初恋の女の子とのシーンは珠玉。

『 ある晩私たちは肱(ひじ)かけ窓のところに並んで百日紅の葉ごしにさす月の光をあびながら歌をうたっていた。そのときなにげなく窓から垂れてる自分の腕をみたところ我ながら見とれるほど美しく、透きとおるように蒼白くみえた。それはお月様のほんの一時のいたずらだったが、もしこれがほんとならば と頼もしいような気がして
「こら、こんなに綺麗にみえる」
といっておちゃんのまえへ腕をだした。
「まあ」
 そういいながら恋人は袖をまくって
「あたしだって」
といって見せた。しなやかな腕が躐石みたいにみえる。二人はそれを不思議がってこの腕から脛(はぎ)、脛から胸へと、ひやひやする夜気に肌をさらしながら時のたつのも忘れて驚嘆をつづけた。』

「ひやひやする夜気」とか、他の箇所でも「美しく寂しい半島のその海岸の小山のふところにこっとりとたった草ぶきの建物」とか、擬音の使い方が独特で、かつ美しい。

前半はまだ幼くて世界もせまく、主人公が感じる感情も「あれは好きとかこれは嫌い」くらいなのだが、学校に行ってからは、出会う人も増え、考えることも著しく面白くなってゆくのもまたよい。
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