日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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酒見賢一の描く、史実と不思議が混在した世界を味わえる。

漢の時代の歴史家、司馬遷は、殷という国が滅び、かわって周が天下を治めるあたりから、神話伝記ではなく、科学的に検証しうる歴史が始まったと考えていたようだ。
たしかに、これより前の歴史は、神話のような逸話が多い。

周王朝建国の功労者の1人、周公旦。
中国史上屈指の聖人と言われ、名政治家であり、孔子が尊敬してやまなかった人物。
彼の最大の業績は、「礼」の整理再編にあるという。

「礼」というと、礼儀作法やマナーを連想するが、この本によると・・
『礼は、古代中国の宗教から社会規範、及び社会システムにまで及ぶ巨大な取り決めの体系』
である。戦いも、王の病気を治すのも、外交も、礼によるところが大きい。

たとえば、周が殷の国と戦う前に発する、宣戦布告の声明文「太誓」では。
殷の罪悪をつらね、対決する理由を明らかにし、主殺しという後ろ暗さを取り除く心理的魔術的効果を生み出す。
言語の異なる部族にも、力のある言の組み合わせが呪となり、各部族の繊維を高め、まとめてゆく。
祈祷の文は人を易えて、動かす力がある。

登場人物や出来事は史実とおり。
周公旦が呪術や占いに詳しく、字を書いて呪をしたり、礼の力で地霊と交信したりするファンタジーなエピソードが「そんなこともあったのかもね」と思えるような自然さで織り込まれる。

長年天下を治めていた悪名高い殷を倒し、周がそれに変わる殷周革命という大舞台。
殷を倒すべく天命を受けた偉大なカリスマ、文王。
志半ばに倒れた文王の遺志をついで殷を倒す、息子の武王。
それを懸命に補佐する武王の弟、周公旦。殷周革命あと国が整わぬうちに武王が亡くなり、治国に苦心する。
希代の戦略家、太公望。
早死にした武王のあとをつぐ、若き成王。

これらの人物が入り乱れるドラマとしても面白い。

特に、人間を知りぬき、80歳をこえて未だ謀略すさまじい太公望が、いい味を出している。
文王と武王に献身をつくした彼は、決して、だからと言って、周の建国に永遠に協力してくれるワケではなかった。
周の力が弱まり、天下が乱れようとすれば、そのときは自分が立つしかない事と確信しており、武王が夭逝した後、乱れかけた周の国をめぐって、周公旦と水面下で激しい争いをする。

(こたびは叔旦[※周公旦のコト]が上であった)
と負けを認めるものの、
(まあいい。わしが望んでいたことは結局は安定した天下なのだ。わしの代わりに叔旦がやってくれるというのなら、それはそれでいい。やってみよ、叔旦。二度とわしに謀反気を起こさせるようなことはするなよ)
という台詞がかっこいい!
優等生っぽい周公旦が、偉大な王になるはずだった兄・武王が亡くなり、自分では天下を治める器量はないと知りつつ、まだ幼い次の王に代わり、諸侯たちを押さえ、太公望の魔手も必死でかわすあたり、見所の1つだった。
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