日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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「こんな恋愛小説を待ち焦がれていた。わたしは、飛行機のなかで、涙がとまらなくなった・・・・・・」児玉清氏、絶賛!!という帯に惹かれて購入したが、私は全く泣けなかった。恋愛に対しては一人一人価値観が異なり具合が激しいからなのか、恋愛小説で「これはいい」というものにまだ出会っていない気がする。

45歳で亡くなった翻訳家で詩人の四条直美が娘に遺したテープ。
そこに語られる、1970年大阪万博の夏。直美はそこで、人生の宝物というべき恋をする。
その内容を娘の婿が起こした、という形の小説。

婿は娘と小学生からの付き合いで、子供時代の婿が見た、直美の描写がなかなか素敵だ。
祖父はA級戦犯という旧家出身のお嬢様でありながら酒も煙草も嗜む不良で、多くの人に愛されかつまた同じくらいの数の人に憎まれ、気に入らない相手に対しては批判や攻撃はせずただほんの数秒間目を見つめるだけ。子供たちを笑わせる冗談を心得、古い外国の曲を流暢な英語で歌う。

テープで語られる23歳の直美は、親に従って許婚と結婚する前に、自由な時間、自分はこれがしたと言い得るだけの何かを探す時間を求めて、両親の反対を押し切り、大阪万博のコンパニオンをやり、運命の相手、臼井礼と出会う。
親に会わせるほどの仲になるのだが、臼井が隠していたある事実を知り、もう付き合えないという短い手紙を残して直美は逃げ出し、恋は終わる。

しっとりした語りは読みやすく美しい。
女性が思うように生きることが難しかったり、戦後の復興、大阪万博の熱狂ぶりなど、時代の雰囲気がよく書かれており、直美の人生に対する沁みるような言葉たちも良いのだが、ストーリーがすごく良いというわけではなく、なんとなく雰囲気がいいなあ、という感じで最後まで全く泣けなかった。

「これでお終いだ、もうどうにもならない。私自身、何度そう考えたかしれません。でも、運命というものは私たちが考えているよりもずっと気まぐれなのです。昨日の怒りや哀しみが、明日には何物にも代え難い喜びに変わっているかもしれないし、事実、この人生はそうしたことの繰り返しなのです」

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海の美しい田舎で、少年が過ごした夏休み。そこで起こる殺人事件。
事件のトリックや動機はあまり納得がいかず、ミステリーとしてすごく面白い!わけではないが、少年と湯川准教授のやりとり、夏らしい描写、偏屈な少年が学ぶ意味・科学の楽しさを知り、負わされた重い枷に対して「いろいろなことをいっぱい勉強して、それからゆっくりと答えを探そう。僕は一人ぼっちじゃないんだから。」と思えるようになるラストが爽やかで良い。

少年の伯母一家の経営する旅館の客が、変死体で見つかる。
客は元警視庁の刑事。何のゆかりもないこの土地に、何をしに来たのか?なぜ殺されたのか?
客がこの町にやってきた理由を、東京で刑事たちが少しずつ明らかにしていく過程も、読み進むたびに手がかりが増えていくのが快感。

科学についての湯川の言葉。

「人類が正しい道を進むためには、この世界がどうなってりうのかを教えてくれる詳しい地図が必要だ。ところが我々が持っている地図はまだまだ未完成で、殆ど使い物にならない。だから二十一世紀になったというのに、人類は相変わらず間違いをしでかす。戦争がなくならないのも、環境を破壊してしまうのも、欠陥だらけの地図しか持ってないからだ。その欠けた部分を解明するのが科学者の使命だ」

それを「僕には関係ない」と言う少年に対してさらに、人類というと大げさに聞こえるが、人が何か行動するときの選択に科学が必要だ、と教える。
たとえば海に行く予定があれば晴れるかどうか天気を知りたいだろう、と。
その天気予報だって、地元の漁師が天気を知るのだって、科学だ。理科の勉強が役に立たないなんて、天気図の見方を覚えてから言うべきだ、と。

「理科嫌いは結構だ。でも覚えておくことだな。わかんないものはどうしようもない、などといっていては、いつか大きな過ちを犯すことになる」

そして物語ラストで、少年にかける言葉。
「どんな問題にも答えは必ずある」
「だけどそれをすぐに導き出せるとはかぎらない。人生においてもそうだ。今すぐには答えを出せない問題なんて、これから先、いくつも現れるだろう。そのたびに悩むことには価値がある。しかし焦る必要はない。答えを出すためには、自分自身の成長が求められている場合も少なくない。だから人間は学び、努力し、自分を磨かなきゃいけないんだ」


★★★☆☆真夏の方程式-----東野圭吾
「告白」に比べると、パンチ不足。読んでいる間は続きが気になって先を急ぎたくなるが、読み終わってみるとあまり印象に残らない。

高級住宅街に隣り合う遠藤家と高橋家。
背伸びしてここに一軒家を建てた遠藤家の一人娘は、私立中学受験に失敗し、毎晩のように癇癪を起こし、色々なものを投げつけたり暴言三昧、親はそんな娘を持て余している。高橋家はエリート医師に美人妻、家を出ている長男は医大生、同居する2人の姉弟はどちらも名門校に通う優等生。
この2家族と、近所に住む小島さと子。
物語は彼らの視点で進んでゆく。
2家族と、それを物見高く観察する小島さと子を交互にちりばめ、語らせ、物語を進めるという構成は面白い。

ある夜、高橋家で、妻が夫を殴って殺害するという事件が起きる。
何の問題もなさそうに見えた家庭で、何が起こったのか?
事件当日、姉は外泊しており、弟は事件以来、行方不明。
真相がわからないまま、様々な視点で、それぞれの家庭の物語が少しずつ語られる。

登場人物たちは、みんな問題がある。
みんな自分勝手だったり、事なかれ主義だったり、読んでいて腹立たしいシーンがいくつもあるが、全員、善人でもなければ悪人でもない。
それぞれ事情を抱え、それぞれができる精一杯をやって毎日を生きている至って普通の人たち。
そういう普通の家庭に起こりうる、問題を描いた作品、なんだろうか?

自分の都合しか考えていないと思っていた小島さと子についても、ラストでは見違えるような親切な態度で、それについて
「冷静に考えると、こちらが自分の知っている、ひばりヶ丘で一番頼りになる小島さんちのおばさんだった。」
と記述されている。
誰でも、悪意を持って人に接するわけではなく、それぞれの都合で生きていて、その都合によって、他人に良くできたり、できなかったりする、という事なのだろうか、と思った。


彼氏と大喧嘩の果てに薬の過剰摂取で精神病院に強制入院となった主人公・明日香。目が覚めたら体が拘束されていて、そこから入院までの経緯を思い出したり、病院内の観察したり、徐々に状況がわかってくる運び方が上手。
短くポップな文体が無駄ない描写で、薄くてさらりと読めるが、院内のいろいろな種類の患者やナースの様子も手広く描かれ、内容は見た目より充実している。

自分がここにいるのは間違いで一刻も早い退院を願う明日香だが、前の旦那との離婚話やそこからの鬱など、なかなかハードな人生で、そういった過去を見つめなおし、ラストでは再生への一歩を踏み出す、というところまで展開する。

コンパクトにまとまっていて読みやすい。
が、軽やかな文体で気持ち悪い事を書いてあるのが、どうも合わなくて読んでるとゾワゾワしてしまった。
冒頭のゲロでうがいをするシーンはその最たるもので、かなり気分悪くなるけど、斬新で秀逸ではある。
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