日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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"ウォッチメイカー"と名乗る連続殺人犯。
被害者の脇には、アンティークの時計が置かれ、被害者は自分の死に至るまでの時間を、その時計で思い知らされながら死んでいったと思われる。

なんか既視感を感じる、と思ったら、この本はリンカーン・ライムというニューヨーク市警の科学捜査顧問とその同僚たちの活躍を描いたシリーズ第7弾で、1作目の「ボーン・コレクター」を映画で見たことがあるのだった。

用心深い犯人が現場に残したわずかな手がかりを元に、ライム率いるプロフェッショナル集団が、緻密な捜査と推理で犯人を追い詰めてゆく過程はたまらなく面白い。犯人の冷酷無比な異常っぷりをこれだけ上手にかけるのもすごい。
それだけでなく、物語には、何度もどんでん返しがある。
そのくるりっと返る瞬間がまた見事。

今作でシリーズ初登場という、尋問のプロ、キャサリン・ダンスの登場やその仕事ぶりも鮮やかで快感。キネシクスの専門家という彼女は、証人や容疑者のボディランゲージや言葉遣いを観察し、分析する。それはカンというようなあやふやなものではなく、立派な科学で、彼女の説明を聞くと、自分にもできるんじゃないかと思えてしまうくらい、その観察や分析は論理的なのが面白い。

物語が感動するとか、深く心に残るという類の本でないので、再読はしないかもしれない。
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著者の初めての時代小説。
ミステリー仕立てになっているが、ミステリーというには物足りないし、人情モノというにもイマイチ。
小間物問屋「遠野野」の若おかみが、川に飛び込んで、亡くなった。
妻の死体を見た「遠野野」の主人は、死因に納得がいかないと言い張り、岡っ引の伊佐治と、その上司の同心・木暮信次郎に事件の調べなおしを依頼する。

情にあつく、調べも的確で町の人に信頼され、いかにも「いい岡っ引」という伊佐治。
伊佐治が長年仕え、共に働いてきた右衛門の息子で、その跡を継いだ信次郎はまだ若いが切れ者と評判で、世が戦国なら一花咲かせたであろう才覚の持ち主だが、平和な時代にそれを持て余し、異常なほど面白い事を渇望している。伊佐治には、この若者の、乾いた性格がどうしてもなじめない。

そんな信次郎が、多忙な中、事件の調べなおしに着手したのは、遠野野の主人に興味を持ったからだった。
商人とは思えない身のこなし、殺気。元武士だというが出身は謎のまま物語が進む。

この3人の絡みには、それぞれの個性をよく出ていて面白いが、せっかく色々調べ、新たな死人も出て、ミステリーとして盛り上がってきたと思いきや、最後はややファンタジーな方向に話が流れ、謎解きの楽しみはないし、人間模様もありきたりと言えばありきたりで、遠野野の正体やら物語の結末やら驚くほどの展開ではなかった。

上京した20歳の知寿が、71歳の吟子さんと同居する何気無い日々が淡々と描かれるが、常に静かな不安に満ちており、それが退廃的で美しい。
ひらがなが多いせいか、乾いた感じの文章。

人生に不安や虚しさを感じ、知寿の鬱々とした呟きに共感する時も、ある。
でもこの呟きのかすかな美しさに、少し、救われる。

『追うものなどなく、去っていくばかりに思えるのに、わたしの心はあせっている。
ピアノをめちゃくちゃに、叩くように弾きたい。
箪笥の中の洋服を全部燃やしたい。
指輪や、ネックレスやら、ビルの上から投げ捨てたい。
煙草を一度に十本吸いたい。
そうしたら、振りきれるだろうか。
ちゃんとした生活など、いつまでたっても自分にはできない気がした。手に入れては投げ出し、投げ出され、投げ出したいものはいつまでも一掃できず、そんなことばっかりで人生が出来ている。』
愛した男の子供をただこっそりと見に行っただけの希和子は、小さくてあたたかくて笑っている赤ん坊を目の当たりにして、「私がまもる」という想いに支配され、誘拐してしまう。薫と名づけた不倫相手の子供を連れてひたすら逃げる人生。前半はその逃避行を希和子の視点、後半は誘拐された子供が成長してからの物語。

淡々とした中にも張り詰めた緊張があり、続きが気になる上手な語り。ただ、不倫相手の子供を誘拐とか、新興宗教とか、週刊誌にありそうなスキャンダラスなネタが満載で、一見面白そうだが、小説として熟成しているかというと、そうでもない。

誘拐時に発生したという火事が、希和子は身に覚えがないという伏線が、意外な展開になるかと思いきや何もなかったのも肩すかし。物語として、火事を起こす必要が果たしてあったのだろうか?

誘拐された子供の物語も、幼少時を誘拐犯と過ごし、実の家族や人との距離感に悩み、克服する話にしてはどこか浅いし、内容も短い。
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