日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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「点と線」と並び称される著者の代表作。
昭和30年代の物語。この時代をよく知らない私が読んでも、描写に違和感がないので、上手な文章なんだと思う。

主人公・禎子が見合いで知り合ってよく知らぬまま結婚した夫が、新婚旅行直後に、失踪してしまう。
東京と金沢を仕事で往復し、毎月20日間近くを金沢で過ごしていた彼は、結婚を機に東京に戻る事にし、仕事の引き継ぎに金沢へ出張したまま予定の日になっても帰って来ない。
金沢へ夫を探しに行った禎子は、金沢での夫の知り合いをたずね、行方を調べようとする。手がかりのようなものがつかめていくのに、夫の事を何も知らない禎子にはその手がかりが指すものがわからず疑惑だけが残り、また、手がかりをつかんだと思ったら関係者が次々に殺され、なかなか物語が進まない。それが読んでて不快なのろさではない。

この物語のゆっくりさ。
徐々に明らかになる夫の金沢での過去至極冷静に見つめる禎子の静かな視線。(解説では、「普通夫のそんな一面知ったらもっと怒るだろー、物語としておかしい」と書かれているが、あまり人間味の無いこの冷静さがこの物語には合っててよかったと思う)
暗い冬の北陸の陰鬱な雰囲気。
昭和30年代の古くさい感じ。

これらがあいまって、冷たく暗い雰囲気が全体的にただよっていて、それを楽しめた。
犯人や動機には、当時の社会問題が背景となっているようだが、そんな理由でここまで人を殺すか?とやや共感しにくい。古い作品なので、当時はしっくり来るものだったのかも。


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連作短編の名手、加納朋子。
本作も、6つの短編で構成されており、それぞれに主人公が違うのだが、全体で1つの話になっている。この構成がうまい。

17歳の女子高生・安藤麻衣子が、通り魔に殺された。

最初の短編は、麻衣子の友人・直子の父親が、雨の中、葬儀に参加するシーンから始まる。
娘の直子は麻衣子の死以降、様子がおかしくなってしまった。
まるで麻衣子の幽霊が乗り移ったかのような言動。
葬儀で出会った麻衣子や直子の通う高校の保健の養護教諭・神野先生に、それを打ち明けると、彼女は話を聞いただけで、その幽霊の真相を解き明かす。

次の短編では、主人公は、神野先生の同僚の英語教諭になり、というように、死んだ麻衣子を核にしながら、少しずつ視点がうつってゆく。
6話すすむうちに、とびきりキレイで成績も優秀、皆のアコガレの的だった麻衣子の内面が見えてくる。若くて賑々しく生を謳歌する女子高生達のガラスのような脆さが端々に書かれる。

不安定な女子高生達のカウンセラー的な存在で、どの短編でも謎解き役となる聡明な神野先生。

実は、この神野先生が、悲しい過去を抱えていることが、物語がすすむと、わかってくる。
その事件が、この短編の実は、核となる。

麻衣子の死の真相は、ちょっと無理矢理感があるが、連作短編としてはよくできている。
1つ1つの短編にも、謎解きがあり、よくまとまっているが、それが集まって全体で1つの話となり、1短編を読み終えると、全体もちょっと進んでいる。それが、最後にすべてつながる。
この進み具合が絶妙で、さすが、短編の名手。

若い命が無残に奪われたり、過去の悲しい事件とかやや暗い色調だが、最後にこれを挽回するような後味のよいラストがあり、全体的に女性らしい優しい雰囲気。
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