日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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いやー、この冒険譚は、理屈抜きで「楽しい!面白い!」と思ってしまう。

子供心に一度は夢見るような、無人島で子供達だけのサバイバル生活。
たとえば、島の地図をつくる。
洞穴を改造して住み心地をよくする。窓をあける。広間や台所をつくる。
野生の植物を採ったり、動物を狩ったりする食生活。
いかだで川を下る、ボートで湖を移動する。
川や岬や湾に、自分達で好きな名前をつける。

子供の頃にあこがれた生活が、ここにある。


実際に子供の頃の私が、イヤ今の私でも、こんな目に遭ったら、楽しむ余裕も無いだろうけれど。
まず、動物を自分で狩って皮を剥ぎ、その肉を料理することがムリだ。
電気もガスも無いところの生活なんて3日と、もつまい。

そういう現実的なところは考えずに、無責任に、自分もここに居たらなあ、と想像して楽しむのがよい。

ニュージーランドの寄宿学校に通う、イギリス人・フランス人・アメリカ人の少年達。
休み中に船旅をするステキな計画があったのだが、不慮の事故で、少年達だけが乗り込んだ状態で、船が嵐の中に流されてしまい、15人の少年と1匹の犬は、無人島に漂着する。

最年長でも14歳という子供だけの集団だが、船に残った食料や武器や道具を活用し、島で生き延びる工夫をあみだし、さまざまな困難に立ち向かう。
利発で年下の子たちに優しいブリアン。ブリアンに対抗意識を燃やし、トラブルの元となる、いばりたがりの秀才のドノバン。穏やかで思慮深い最年長のゴードン。料理が得意な黒人のボーイ、モーコー。食いしん坊のコスター。などなど、15人の少年のキャラクターの人物像もなかなか面白い。

男の子ばっかり、というのがまたよい。
ここに女の子が登場したり、恋愛が芽生えたりすると、また雰囲気が違ってしまうだろう。
男の子たちだけで、時にやんちゃに、ワガママに、けれど勇気と友情、勤勉、思慮、熱心を発揮して、困難を乗り越えるところが、いいんだよなー。

少年たちは無事に故郷に帰りつけるのか?
島に流れ着き、さまざまなトライ&エラーで島で生活する方法を確立していき、それも落ち着いてきた終盤に、小さな事件から大きな事件が発生し、クライマックスを迎えて、ラスト、という話の流れも、王道だけど、上手な展開。


同じようなストーリーで、ウィリアム・ゴールディングの「蝿の王 (新潮文庫)」がある。
こっちは全く趣が違って、だんだん少年たちが狂気におかされる、というか本能があらわになるというか、息詰まるような展開でイヤ~な感じ。
個人的には「十五少年~」のような読後がさわやかなのが好きなんだが、対比的に「蝿の王」を読み返したくなってきた。

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8つの短編。

表題作の「モノレールねこ」では、主人公の小学生が、伝書鳩ならぬ伝書猫をつかって、首輪に手紙をはさんで、見知らぬ相手と文通する。
こういう、日常にありそうだけど本当にあったらちょっとしたファンタジーになるようなエピソードが、なかなか可愛らしい。

また、モノレールねこ、という命名がいい。
タイトルだけ見た時は、その名前の由来がわからなかったが、読んだら、納得。想像して、クスっと笑ってしまう。あーわかる、と思う。
著者は、日常にある、こういう何気ない景色を見て、楽しめる人なんだろう。そういうの、好きだ。

「いかにもお涙ちょうだい」なストーリーが多かったが、軽くてコミカルな文体と、真摯なぬくもりが感じられるまなざしと、読み手の予測の半歩先をいく小さなビックリがうまくちりばめられていて、こんなんで泣かないぞーという天邪鬼な気持ちにならず、素直に泣けた。

得意の「日常の謎」を解く話は無いが、面白かった。

「セイムタイム・ネクストイヤー」の小さなビックリは特にうまいなあ、と思う。
悲しい話だけど、悲しさだけでなく、小気味よい展開と、上等なビロードのような手触りのあたたかさがあって、この本の中では比較的オトナっぽいしっとりした幻想的なムードが漂う。


収録作品:
「モノレールねこ」
「パズルの中の犬」
「マイ・フーリッシュ・アンクル」
「シンデレラのお城」
「セイムタイム・ネクストイヤー」
「ちょうちょう」
「ポトスの樹」
「バルタン最期の日」

やわらかい色彩の表紙の絵が可愛かった。
戦国時代の中国で活躍した、築城の名人として名高い、墨子。
彼が作った教団は、「兼愛」「非戦」「弱気を助け強気をくじく」という思想にもとづき、日々、城を守る技術と知識を磨き、大国に襲われる小規模な城を守る弱者を助けるべく教団メンバーを傭兵として派遣する。

墨子の跡を継ぎ、3代目の田嬰の元で働く革離は、ある日、大国・趙の攻撃を受ける小さな城へ、救援へ向かう。
本来はチームで派遣され、それぞれの専門分野で坊城を担当するのだが、革離はこの時、当初の思想から離れつつある教団に反発し、田嬰の命令に反する形で、たった1人で城へ乗り込むことになった。


あらゆる手をうち、女好きでやる気のない城主と、非戦闘員の村人達を抱えて、革離が坊城に奮闘する様が、無駄の無い文章で描かれる。

ストーリーとしては割と味気なく、さらりと読み終わってしまうが、革離が見せる、守り方の1つ1つの磨かれた技術・知識や、ほとんど寝ないで無償で働く特異な勤労意欲に見える墨子教団の思想は「へぇ~!!」「はぁ~!!」と面白く読める。

漫画にも映画にもなっている。激しい攻防戦を映像で見るのもまた面白いかも。






安楽椅子探偵ミステリと野球が混ざったちょっと変わった趣向の、ほのぼのした本。
地味だけど面白い。
加納朋子とか、北村薫を思い起こす。

見縞市を本拠地とする、パ・リーグの球団、東海レインボーズ。
万年最下位で、球場はいつもガラガラだが、そのファンの姿勢は真摯で、ホンモノの野球を愛する人々だ。

亡き夫の跡をついで、レインボーズのオーナーを務める未亡人・虹森多佳子は、ろくにルールも知らない野球オンチだったが、オーナーになったのをきっかけに、球場に足を運び、試合を眺めるようになる。
この多佳子の横に、常に解説役がつくので、野球を知らない読者にも、試合の流れがわかるようになる仕掛けがある。

物語は、5つの短編で構成される。
それぞれ主人公はさまざまな老若男女だが、いずれも舞台は球場。
謎をかかえた主人公たちが球場で話す内容から、多佳子は、おっとりとした口調で、卓越した推理を導き出す、というトコロが爽快。

それぞれに凝ったトリックがあるわけではないが、会話だけで推理する探偵モノだが、「えー何それ」という論理の運びはないし、それぞれの話が割とほのぼのとしていて、楽しく読める。


レインボーズの選手たちは、みな、色がつく名前で、「朱村」とか「緑川」とか「紫水」とか。
こういう遊びがあるのも嬉しい。

野球部分は私はあまり好きでなく、とばし読みがちだったが、「いまの試合を見ていて、思いましたの」というような推理の流れが、試合の流れとリンクしていて、野球好きにはまたいっそう楽しめるのでは。

なお、この本は初めは自費出版されたものが、口コミなどで広まり、創元推理文庫から刊行されたという珍しい経歴。あまり知られてないようだが、読んだ人には好評な模様。
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