日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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連作短編の名手、加納朋子。
本作も、6つの短編で構成されており、それぞれに主人公が違うのだが、全体で1つの話になっている。この構成がうまい。

17歳の女子高生・安藤麻衣子が、通り魔に殺された。

最初の短編は、麻衣子の友人・直子の父親が、雨の中、葬儀に参加するシーンから始まる。
娘の直子は麻衣子の死以降、様子がおかしくなってしまった。
まるで麻衣子の幽霊が乗り移ったかのような言動。
葬儀で出会った麻衣子や直子の通う高校の保健の養護教諭・神野先生に、それを打ち明けると、彼女は話を聞いただけで、その幽霊の真相を解き明かす。

次の短編では、主人公は、神野先生の同僚の英語教諭になり、というように、死んだ麻衣子を核にしながら、少しずつ視点がうつってゆく。
6話すすむうちに、とびきりキレイで成績も優秀、皆のアコガレの的だった麻衣子の内面が見えてくる。若くて賑々しく生を謳歌する女子高生達のガラスのような脆さが端々に書かれる。

不安定な女子高生達のカウンセラー的な存在で、どの短編でも謎解き役となる聡明な神野先生。

実は、この神野先生が、悲しい過去を抱えていることが、物語がすすむと、わかってくる。
その事件が、この短編の実は、核となる。

麻衣子の死の真相は、ちょっと無理矢理感があるが、連作短編としてはよくできている。
1つ1つの短編にも、謎解きがあり、よくまとまっているが、それが集まって全体で1つの話となり、1短編を読み終えると、全体もちょっと進んでいる。それが、最後にすべてつながる。
この進み具合が絶妙で、さすが、短編の名手。

若い命が無残に奪われたり、過去の悲しい事件とかやや暗い色調だが、最後にこれを挽回するような後味のよいラストがあり、全体的に女性らしい優しい雰囲気。
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8つの短編。

表題作の「モノレールねこ」では、主人公の小学生が、伝書鳩ならぬ伝書猫をつかって、首輪に手紙をはさんで、見知らぬ相手と文通する。
こういう、日常にありそうだけど本当にあったらちょっとしたファンタジーになるようなエピソードが、なかなか可愛らしい。

また、モノレールねこ、という命名がいい。
タイトルだけ見た時は、その名前の由来がわからなかったが、読んだら、納得。想像して、クスっと笑ってしまう。あーわかる、と思う。
著者は、日常にある、こういう何気ない景色を見て、楽しめる人なんだろう。そういうの、好きだ。

「いかにもお涙ちょうだい」なストーリーが多かったが、軽くてコミカルな文体と、真摯なぬくもりが感じられるまなざしと、読み手の予測の半歩先をいく小さなビックリがうまくちりばめられていて、こんなんで泣かないぞーという天邪鬼な気持ちにならず、素直に泣けた。

得意の「日常の謎」を解く話は無いが、面白かった。

「セイムタイム・ネクストイヤー」の小さなビックリは特にうまいなあ、と思う。
悲しい話だけど、悲しさだけでなく、小気味よい展開と、上等なビロードのような手触りのあたたかさがあって、この本の中では比較的オトナっぽいしっとりした幻想的なムードが漂う。


収録作品:
「モノレールねこ」
「パズルの中の犬」
「マイ・フーリッシュ・アンクル」
「シンデレラのお城」
「セイムタイム・ネクストイヤー」
「ちょうちょう」
「ポトスの樹」
「バルタン最期の日」

やわらかい色彩の表紙の絵が可愛かった。
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