日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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著者の初めての時代小説。
ミステリー仕立てになっているが、ミステリーというには物足りないし、人情モノというにもイマイチ。
小間物問屋「遠野野」の若おかみが、川に飛び込んで、亡くなった。
妻の死体を見た「遠野野」の主人は、死因に納得がいかないと言い張り、岡っ引の伊佐治と、その上司の同心・木暮信次郎に事件の調べなおしを依頼する。

情にあつく、調べも的確で町の人に信頼され、いかにも「いい岡っ引」という伊佐治。
伊佐治が長年仕え、共に働いてきた右衛門の息子で、その跡を継いだ信次郎はまだ若いが切れ者と評判で、世が戦国なら一花咲かせたであろう才覚の持ち主だが、平和な時代にそれを持て余し、異常なほど面白い事を渇望している。伊佐治には、この若者の、乾いた性格がどうしてもなじめない。

そんな信次郎が、多忙な中、事件の調べなおしに着手したのは、遠野野の主人に興味を持ったからだった。
商人とは思えない身のこなし、殺気。元武士だというが出身は謎のまま物語が進む。

この3人の絡みには、それぞれの個性をよく出ていて面白いが、せっかく色々調べ、新たな死人も出て、ミステリーとして盛り上がってきたと思いきや、最後はややファンタジーな方向に話が流れ、謎解きの楽しみはないし、人間模様もありきたりと言えばありきたりで、遠野野の正体やら物語の結末やら驚くほどの展開ではなかった。

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上京した20歳の知寿が、71歳の吟子さんと同居する何気無い日々が淡々と描かれるが、常に静かな不安に満ちており、それが退廃的で美しい。
ひらがなが多いせいか、乾いた感じの文章。

人生に不安や虚しさを感じ、知寿の鬱々とした呟きに共感する時も、ある。
でもこの呟きのかすかな美しさに、少し、救われる。

『追うものなどなく、去っていくばかりに思えるのに、わたしの心はあせっている。
ピアノをめちゃくちゃに、叩くように弾きたい。
箪笥の中の洋服を全部燃やしたい。
指輪や、ネックレスやら、ビルの上から投げ捨てたい。
煙草を一度に十本吸いたい。
そうしたら、振りきれるだろうか。
ちゃんとした生活など、いつまでたっても自分にはできない気がした。手に入れては投げ出し、投げ出され、投げ出したいものはいつまでも一掃できず、そんなことばっかりで人生が出来ている。』
この本を読んでいると、口の中や体に砂がまとわりつくような不快感を覚える。
でもそれが快感になる。

昆虫採集に出かけた男が、海ぞいにある、砂ばかりの土地で、部落ぐるみの企みによって、砂の壁に囲まれた穴の中の家に閉じ込められ、その家に居た女と共に、降り積もる砂を除きながら暮らす事になる。
その設定は奇抜だが、そこでの暮らしの描写はしつこいくらいにリアルで緻密で、変な現実感がある。
砂がからむ描写が特にリアルで、だから砂を肌に感じてしまう。

果たして男は脱走できるのか!?とストーリーを楽しむというより、そのしつこい描写をねっとりと楽しんで読んだ。
ぜひ。蒸し暑い所で読んで、湿気くさい、狭い、暑い、砂だらけの家の不快さをじっくり味わいたい。

最後に冷たい水が登場する。
極端に水気がないから、それがすごく清く冷たい水に見えて痛烈に気持ち良かった。
ねっとりと不快さを味わって、それが慣れて快感になるころ、この水の爽快感が印象に残る。

20ヶ国以上で翻訳された名作らしいが、翻訳でこの雰囲気出るのかしら、と思った。

amazonに出ている文庫は新しいのか、私が読んだ新潮文庫はこういう表紙だった。こっちの方が本の内容に合ってると思う。
砂の女
安楽椅子探偵ミステリと野球が混ざったちょっと変わった趣向の、ほのぼのした本。
地味だけど面白い。
加納朋子とか、北村薫を思い起こす。

見縞市を本拠地とする、パ・リーグの球団、東海レインボーズ。
万年最下位で、球場はいつもガラガラだが、そのファンの姿勢は真摯で、ホンモノの野球を愛する人々だ。

亡き夫の跡をついで、レインボーズのオーナーを務める未亡人・虹森多佳子は、ろくにルールも知らない野球オンチだったが、オーナーになったのをきっかけに、球場に足を運び、試合を眺めるようになる。
この多佳子の横に、常に解説役がつくので、野球を知らない読者にも、試合の流れがわかるようになる仕掛けがある。

物語は、5つの短編で構成される。
それぞれ主人公はさまざまな老若男女だが、いずれも舞台は球場。
謎をかかえた主人公たちが球場で話す内容から、多佳子は、おっとりとした口調で、卓越した推理を導き出す、というトコロが爽快。

それぞれに凝ったトリックがあるわけではないが、会話だけで推理する探偵モノだが、「えー何それ」という論理の運びはないし、それぞれの話が割とほのぼのとしていて、楽しく読める。


レインボーズの選手たちは、みな、色がつく名前で、「朱村」とか「緑川」とか「紫水」とか。
こういう遊びがあるのも嬉しい。

野球部分は私はあまり好きでなく、とばし読みがちだったが、「いまの試合を見ていて、思いましたの」というような推理の流れが、試合の流れとリンクしていて、野球好きにはまたいっそう楽しめるのでは。

なお、この本は初めは自費出版されたものが、口コミなどで広まり、創元推理文庫から刊行されたという珍しい経歴。あまり知られてないようだが、読んだ人には好評な模様。
最近、面白いと評判の作家さん、初めて読んでみた。
SFはあまり好きな分野ではないのだけど、これは面白いと思った。

太古の昔から、空に浮かんで存在し、波動を感知できる知的生命体。
ある飛行機事故がきっかけで、この生物が、人類の目に触れることになった。
こういう生物をリアルに考えてつくりあげるところがすごい。
この生物の面白いところは、人間が発する電波をキャッチし、人間について学び、言葉も理解できるものの、ただ1個の個体であるがゆえに、「集団」という概念がわからないところ。
この生物に、人間の集団=国家について説明したり、この生物が不本意にも分裂して集団になってしまった物語後半、集団としての意思の統一方法というものを真剣に教えるあたり、マジメに話していても、どこかバカバカしい雰囲気になるところが面白い。

老若男女が登場し、人間ドラマもなかなか華やか。
宮じいと呼ばれる、老人が、頭でっかちな知識ではなく、経験を経て身に着けた賢さを持っている、という漫画に出てくる長老のようで、いい存在感。

触ると刺されて飛び上がるほど痛い魚が、いる。
でもそれは、その魚たちがトゲを持っていることが悪いのではなく、触るほうが悪い。
宮じいが、触るなと教えているのに、わざわざ触る方が悪い。
だから、宮じいは手当てしてくれても絶対なぐさめない。
『やき、触られんと言うたろう。こっちがちょっかいを出さざったら、わざわざ魚のほうから刺しに来やせなあえ。』

面白いけど、文章や登場人物の会話が幼稚で、軽すぎて物足りない、という評もある。
ストーリーやセリフ回しが派手で、わざとらしさはあるが、それゆえに、映像化したら面白そう。
新撰組、特に、土方歳三がものすごくかっこよく書いてある。
ここまでドラマチックにかっこいいと、やや女子向け同人誌っぽさも感じるが、こういう面白さも、まあ、ありか、と思う。
土方の歴史、というか函館・五稜郭で死ぬまでの動きがよくわかる。

命をかけて、サムライであろうとする男たち。
それを慕い、幼いながらも戦場に勇敢に散る少年達。
人物描写でも、心理描写でも、人と人の関係を表す記述でも、美しく、かっこいい描写にいとまがない。

たとえば、わずかな新撰組隊士とともに、新政府軍に囲まれ、絶体絶命の場で、敵の軍監・有馬とその従者・坂本に対面し、ぬけぬけと新撰組である事を隠して「自分達は幕臣で、一揆の鎮圧中であり、新政府軍に弓引く者ではない」と言う場面。他の隊士が恐怖に震える中、土方は・・・・。

『こういうときの土方は(中略)目を見張るほど物腰が優雅になる。さらに土方は有馬の後ろに従える坂本にしばし視線を移し、フッと一瞬微笑んでみせた。十代の坂本はその不意打ちに頬を赤く染める。』

この場面でフッと微笑んだりしちゃう所が、かっこいいなあ、と思う。

帯に「ベストセラー30万部突破!書店発、感涙の恋愛小説」とあって、思わず買ってしまったが・・・うーん。

もともとあまり恋愛小説で「これぞ!」というのに出会ったことがない。
なので、今度はどうだろう?と期待したのだが、どうものめりこめなかった。

主人公の中年女性医師の前に、元恋人が7年ぶりに現れる。
元恋人は、実は余命3ヶ月の末期がんで、主人公は、同僚の婚約者がいるのだが、心ゆれてしまう・・といった話だが、文章が上っ面をすべっているようで、読後、夢の中の出来事みたいにあやふやな印象しか残らなかった。

キャラ:○

元TBS女子アナ 雨宮塔子が、退職してパリで西洋美術を学んだ3年間のエッセイ。
雑誌Oggiに連載されていたようだ。

苦労したこと
感動したこと
小旅行、食べ物の思い出
のみの市への参加
やがて夫となるパティシエさんとの出会い

などなど、とりとめもない感じでつづってある。

著者の素直でまじめな感じに好感。
人生を本気で楽しもうとする気持ちに共感。
パリでの生活を「留学」ではなく「遊学」と言い切る。
遊ぶにも、一生懸命なのが、
そのために苦労するのは覚悟の上、という姿勢が、よい。

当時30歳、と今の私の年齢に割と近いこともあり、同じようにカワイイと思ったり、気持ちに共感できて読みやすかった。

留学のHowTo本という感じではない。気軽に読める異国エッセイ。
パリの雑景や、著者のポートレイト風の写真もオシャレで読みやすい。


後輩が貸してくれた時、本のタイトルを「金曜日の狩り」と聞き間違え、パリに留学した著者が、フランス人のいい男探しにいそしむ話なのかと最初、勘違いした。
全くそんな話ではなかったが、さすがフランス人、地下鉄の階段をあがったら、見ず知らずの男性が「やあ、待ったよ」とふつうに声をかけてきた、とかいうエピソードもある。
しかも見た目もかっこよかったらしく、著者は思わず「ごめん、待った?」と言ってしまいそうだったという感想が面白い。

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