日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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オテル・ド・モル・ドルモン・ビアン。
この響きだけで、すでに何だかステキな、これは、とあるオテルの名前。

この優雅さは、やはりフランス語。
ビアンは、「tres bien」(トレ ビアン)のビアンだろうか。
日本語にすると「ぐっすりもぐらホテル」というような意味らしい。

このオテル。ちょっと不思議な設定なのだが、いかにも本当にありそうに仔細に描かれるホテルの描写がとてもステキでうっとりする。

このオテルは、よい眠りをお客様に与えるために、在る。
全てはそのための施設、そのための決まり。
入り口へは、ビルとビルとの狭い隙間を体をヨコにして進まないと辿り着けない。
インターフォン付きのドアより向こうは、会員限定の静かな空間。
日の入りと共にチェックイン開始。
日の出と共にチェックアウトしなくてはならない。
13階建ての建物は、上にではなく下へ伸び、地下に行くほど、室内の空気は密で重い。
マホガニーの机に、牛皮の椅子があるフロント。
何も匂いがしない、洗い立てのリネン。
ここで働く従業員のモットー。想い。

ひんやりと乾いて、程よく糊がきいた、洗い立ての清潔な真っ白いリネン。
そういう肌触りがする文章。
よろこんでとびこんで横になって眠りたい。

主人公・希里は、働き口を求めてこのオテルにやってきて、その眠りを誘う顔をかわれて、即採用。
希里の目を通して、オテルの詳細が語られてゆく。

希里の家族は、ちょっとフクザツで、両親、双児の妹、妹の夫、妹夫婦の小学生になる娘という構成だが、病弱で問題児だった妹は、クスリをやって入院中。
両親はそれにつきっきり。
妹の夫や娘と、微妙な距離感を保ち、1つの家で暮らす、そこはかとなく重苦しい設定なのだが、淡々とした表現があまりそれを感じさせない。さらりと乾いた印象のまま、悲惨な家庭が語られて、最後にそれでも妹への愛がポッと灯るように印象に残って終わる、快い小説。

私が読んだのは文庫版だが、ハードカバーの本の、表紙の青がとてもキレイ。

第131回芥川賞候補作でもある。
この著者は、何度か候補になっているがまだ受賞してない人のようだ。
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