日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
文:◎ キャラ:◎ ストーリー:○

「ローマ人の物語」シリーズ中で最も面白いのは、「ハンニバル戦記」「ユリウス・カエサル(ルビコン以前)(ルビコン以後)」だと思う。そのうち、「ルビコン以後」は、「ユリウス・カエサル」の人生後半部分を描いたもの。

●元老院から「国家の敵」と通告されたのに反旗をひるがえし、国法で禁止されている「軍団を連れたままルビコン川を渡りローマ国内に入る」を実行したカエサル。敵対勢力・ポンペイウス率いる元老院派と内戦の末に勝利をかちとり、ローマに凱旋。ローマに平和が戻り、カエサルは独裁者として、長年の目標であった、衰えかけたローマの統治力を強化する改革を次々にすすめる。

この改革の内容を読んでいくと、カエサルは、何と創造的な人であったのか、と驚く。
宗教、政治、食料、安全、生活の向上・・・あらゆる分野で、今後のローマが発展すべく、礎をきずいていゆく。戦えば勝つ、政治改革はやる、1人の人物が、軍事、政治の両面でここまで才能を発揮できるものなのか。
「歴史はときに、突如一人の人物の中に自らを凝縮し、世界はその後、この人の指し示した方向に向かうといったことを好むものである。・・・(略)・・・これら偉人たちの存在は、世界史の謎である」という本書で紹介されているブルクハルトの言葉にまさにふさわしい。

改革の最中に、カエサルは暗殺されてしまうのだが、暗殺したのは、かつて内戦でカエサルと戦い、敗れたが許されてその後もローマで政治にたずさわっていた者たち。
カエサルは、内戦の敗者を決して罰しなかった。それは、カエサルが手紙にも書いたこんな思想から。

「わたしが自由にした人々が再びわたしに剣を向けることになるとしても、そのようなことには心をわずらわせたくない。何ものにもましてわたしが自分自身に課しているのは、自らの考えに忠実に生きることである。だから、他の人々も、そうあって当然と思っている」

いやーこんな事を言い、実行できる男には、塩野七生だって惚れてしまう。
他人の考えを尊重する、とは言うは易しく、行うは難い事だ。それが自分の目標の邪魔になったり、ましてや命の危険になっても、であれば、なおさら。

塩野七生のカエサルへの愛情は相変わらずで、思わず惚れてしまいそうになる魅力的なエピソードもたくさん。

8年間ものガリア戦役を共に戦った、子飼い中の子飼いである第十軍団の兵士達が、内戦のさなかに、「給料あげてくれなきゃもう一緒に戦わないぜー」とストライキを起こした時。
カエサルはこれを一言でしずめる。これまで「戦友諸君」と呼んでいた彼らに対して、
「市民諸君」
と呼びかける。
「他の兵士達と戦いに行って、終ったら給料は払うから、安全な場所で待っててくれ」と言われた兵士たちは、立場一転、「連れてってくれ」「カエサルの許で戦わせてくれ」と泣き出す。
うーん、カエサル、かっこいい・・・。


ルビコン以後は、手に汗握る戦闘シーンはルビコン以前のガリア戦記に比べると物足りないが、カエサルが断行する改革で天才の創造を知るのが面白いのと、カエサルとアントニウス、2人のローマ男の愛人となる、エジプトの美しき女王・クレオパトラの存在が物語に華をそえる。
塩野七生は、クレオパトラを、頭はよく機知に富んでただろうが、本当の意味での知性があったかどうか疑わしい、と延べ、アントニウスを篭絡するはいいが現状認識せずに過剰な権力を手にしようとする浅はかな女として描かれている。
クレオパトラの言うがままに、ローマに不利益な行動を繰り返し、国民からも見捨てられるが、愛に生きて、愛する女の胸で死ぬアントニウスが物語としてはいちばんドラマチック。

スポンサーサイト
文:◎ キャラ:◎ ストーリー:○

塩野七生による、ローマの誕生から滅亡までを描いた傑作名著「ローマ人の物語」。
このシリーズの中で最も面白いのは、文庫版で3~5巻の「ハンニバル戦記」と、8~13巻の「ユリウス・カエサル」だと思う。
これらの巻だけを抜き出して読んでもハナシはわかるので、友達に「面白い本ない?」と言われたらこの9冊だけを渡すこともある。

歴史本なのに、小説にも負けないドラマチックなストーリーと、登場する英雄達を実に生き生きと描く著者の筆が、「ハンニバル戦記」と「ユリウス・カエサル」を、盛り上げる。
特に、カエサルを書く著者の筆は、本当に面白い。著者は、きっとカエサルが大好きなんだろうと微笑ましくなるくらい。
カエサル自身の発言、まわりの評価、後世の歴史家のことば、著者自身の考えをおりまぜ、その魅力をあますことなく紹介してくれる。

「ユリウス・カエサル」は、カエサルの若い時からガリア遠征を描く「ルビコン以前」と、ローマの共和制打倒のために内乱をおこす「ルビコン以後」に分かれる。

ガリア遠征をカエサル自身が書いた「ガリア戦記」を私が読もうと思ったのも、この本を読んだから。

若い頃は、あまりぱっとしなかったようだ。
30歳を過ぎて、アレクサンダー大王の像を見て、彼が世界を制覇した年齢に達したのに自分は何もやってない、と反省し、ここから、広大になり統治システムがうまく働かなくなったローマ国家を変えるべく、その目的に向かって、ひたすら進む。
政界に進出し、自分も他人も利をこうむるやり方で、着実に出世し、有力者と手を組み、そして8年間にわたる遠征で、ガリアをローマの支配下におくことに成功。
ガリアの各部族との物理的な戦争がある一方でカエサルが倒そうとしている共和制をになう元老院との政治舞台での戦いがあり、ガリア平定後、元老院から最後通告をつきつけられ、ルビコン川を渡って国家に内乱を起こすか、元老院に従い志をあきらめるのか!?というところで「ルビコン以前」はドラマチックに終わる。

リーダーたるものこうあるべき、という理想像のようなカエサル。その言動は、現代の人が読んでも参考になるのでは。

どんなときも自信があり機嫌のよさを失わず、知性と教養にあふれ、ユーモアを忘れず、女にモテて、目的を達成するための合理的な考え方、部下へのいたわり・敗者への寛大さ(それも目的を達成するための手段かもしれないが)・・・・・。著者の書くカエサル像に、魅了され、ルビコン川を渡るときには、自分も一緒に戦いたくなってしまう。

何故カエサルが女にモテたのか?という考察や、借金まみれでも平気だったという彼のお金に対する考え方、なども面白い。

私財をためる事には興味のなかったカエサルだが、公共事業など必要なものには金をおしまなかった。そのために莫大な借金をしても、全く平気。
それは、あまりに多額の借金は、債権者にしてみれば債務者が破滅して取立て不能になっては困るものとなり、債務者を援助してしまうようになる、という人間心理をついた理由から。
事実、カエサルは多額の借金の債権者にさまざまな事で手を貸してもらっている。
金に飢えず、他人の金と自分の金を区別しない、お金に対する絶対的な優越感。
後世の研究者に「カエサルは他人の金で革命をやってのけた」と書かれる様な。
この一事をとってみても、タダ者ではない感じがステキだ。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。