日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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空飛ぶ馬」で紹介されていた「天守物語」を読んでみた。

美しく幽玄な雰囲気の、妖怪と人との物語が2編が入っている。戯曲形式で、舞台説明とセリフのみで綴られており、読みやすい。セリフが昔コトバなのは読みづらいけど、それが雰囲気があってまたよし。
波津彬子のマンガ化されたものがあり、それを先に読んでしまうと、このマンガが実に原作に忠実だし、よくできていただけに、そのイメージが頭についてしまって、本を読んでも新たな感動はなかった。

未読の人には、この本を読んでから、波津彬子がマンガで再現したものを読むのをオススメする。

●「夜叉ヶ池」は、竜神が封印された池のほとりで、日に3度つかないと竜神が解放されて洪水が起こってしまうという言い伝えの鐘を守る美しい夫婦のハナシ。
白雪という姫君の竜神と、その眷属・鯉七、蟹五郎、万年姥、侍女の椿・・・と名前からしてカラフルな妖怪たちが、文字だけなのに艶やかだ。

私はもう1編の「天守物語」の方が好きだ。

●姫路城の天守には、獅子の頭と、美しい妖怪の富姫とその侍女たちが住む。そこへ登ってきた若侍と姫君は、恋に落ちる。こちらも、姫君の侍女たちの名前が、桔梗、萩、葛、女郎花、撫子、と見るからに華やか。
泉鏡花の文章は、文字だけで色気がある。

この侍女たちが白露を餌に、秋草を釣ったり、蝶々が舞ったり、あくまで妖しく美しい天守の世界。一方、罪もない若侍が、身勝手な殿様のせいで追われる醜い人間の世界。
姫君と若侍が、その人間たちに追いつめられ、盲目になってしまい、共に死のうとするその時すら美しく
「せめてその、ものをおっしゃる、貴女の、ほのかな、口許だけでも、見えたらばな」
「貴方の睫毛一筋なりと」

そこに突然現れ、「美しい人たち泣くな」と、助けてくれる老人。
大団円。
「世は戦でも、胡蝶(ちょう)が舞う、撫子(なでしこ)も桔梗も咲くぞ。・・・・馬鹿めが」と呵々(からから)と笑われ、騒々しい下界と、夢のような天守の世界の対比が強調される。

前半、富姫のところへ、猪苗代の城の亀姫が訪ね、土産を持参する。
「それはそれは、お嬉しい。が、お亀樣は人が悪い、中は磐梯山の峰の煙か、虚空蔵の人魂ではないかい。」
「似たもの。ほほほほほ。」
「要りません、そんなもの。」
「上げません。」

仲良しの2人の姫君のやりとり。お付きの者に、「お言葉の花が蝶のやうに飛びまして、お美しい事でござる」と言われるが、まさにその通り。美しくてほのぼのして好きなシーン。
でもこんなにほのぼのしてるのに、この「土産」が、人の生首であるところが、妖しくてまたよい。



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