日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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刑務所から出所したばかりのスリ常習犯、辻牧夫は、電車で見かけた、高校生のスリ集団を追い、怪我を負う。
それを助けた占い師の昼間薫と、偶然の交流が始まる。
辻がその高校生たちを探し、正体を突き止めようとするのがストーリーの中心。

ストーリーがすごく面白い!というのでもないのだが、登場するキャラクターたちが多種多様で魅力的。
そのキャラクター達がからまりあってゆく様に見とれて引き込まれてしまう。

その中心をなすのが、2人の人物。

昔かたぎで腕利きのおじいちゃんに磨かれた腕を持つスリ、辻牧夫。
物語の冒頭で刑務所から出所したばかりという犯罪者なのだが、人なつこく、飄々としていて、スリなりの正義感や任侠のようなものがあり、憎めない。

栗色の長髪、白い肌、男性だが、全体的に華奢で淡い雰囲気の占い師、昼間薫。
反面、ギャンブル好きで、したたかでもある。
お堅い弁護士の父・姉・親友に囲まれて、それに反発するようにフラフラしてモラトリアムであろうとする。
神がかった能力があるわけではなく、占いにイカサマを使ったりもするが、、そこはかとなく神様を信じているところがあって、穏やかなしゃべりかたや容姿とあいまって「占い師」という職業がよく似合う。

どちらもほのかに色気があって、大変に魅力的だ。
どちらも自分の仕事に誇りと責任を持っていて、またそこがいい。
彼らの仕事について語られるシーンが多く、それが面白い。

辻の職人的なスリの技とか、チームでやるスリの見事さとか、犯罪なんだが、かっこいいと思ってしまう。
昼間は、人の話を聞く能力に長けていて、寒い夜も街に出て、言葉を胸にためこんだ人々から、ただその言葉を聞いて、受け止めている。それが自分の仕事だと思っている。
昼間に話を聞いてもらうと、楽になる、というお客は多い。

エピローグ。この2人が会話をしているシーンで、昼間が辻にタロットカードを渡しながら、
「タロットの歴史は非常に古いのです。」
と、説明するところがある。それを聞いて辻が
「泥棒の歴史も古いね。占い師も」
と答える。ここで2人のここまでの交流や、それぞれの仕事への想いを思い出し、またそういえばどちらもかなり特殊だけど歴史のある職業だな、という納得感があり、印象的。
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ストーリー:◎

雑誌掲載時は連作の短編だったらしく、「彼女」と「彼」それぞれが一人称の物語が、交互につづく。
「彼」の名は、木島悟。絵を描くが好きなサッカー部員。いい加減で社会に居場所を作れなかった父親のようになりたくないと思いつつ、本気になって自分の限界を知るのがこわくて、サッカーでも絵でもそこにぶつかってしまう。
「彼女」の名は、村田みのり。頑固で妥協しなくて、家族も学校もキライなものだらけ、叔父だけが特別に大事で、絵を描く叔父の影響で、自分では描けないけれど、絵が好きであると自覚している。
そんな2人が、高校で、出会う。
どちらかというと私は、みのりを中心に読んでしまう。
中学の頃から、みのりが周りとぶつかり、家族も友達も好きになれずにいるのを見ている。
そんな彼女が彼を好きになる時!そこを読むとき、

恋をした!!私の小さな娘が、とうとう恋をして、「好き」ができた!!

と、思わず喜んでしまう。
そのうち、みのりに対しては、娘というより、自分に重なり、
『木島はすぐに見つかった。なんか、目に飛び込んでくるって感じ。特に騒々しいわけでも、背が高いわけでも(略)ないのに、まるで光でも発しているみたいにパッとわかる。わかると胸がじーんとする。不思議。木島がそこにいるってわかるだけで深々と幸せになれるこの気持ちは不思議。』
というあたりでは完全に、知っている・・・この気持ちを、私は知っている、と自分の片思いの思い出と混ざってしまう。
ちょっと甘くてわざとらしいまでに青春くさいけど、鼻につくような感じではなく、それを楽しめる作品。

佐藤多佳子の本は、まっすぐなメッセージが多い。
彼の祖父が、彼に向かって言うセリフ、迷っている時には心にささる。
「好きなことをやるんだ」
「最後は自分だけだ。誰かのせいにしたらいけない」

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