日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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愛した男の子供をただこっそりと見に行っただけの希和子は、小さくてあたたかくて笑っている赤ん坊を目の当たりにして、「私がまもる」という想いに支配され、誘拐してしまう。薫と名づけた不倫相手の子供を連れてひたすら逃げる人生。前半はその逃避行を希和子の視点、後半は誘拐された子供が成長してからの物語。

淡々とした中にも張り詰めた緊張があり、続きが気になる上手な語り。ただ、不倫相手の子供を誘拐とか、新興宗教とか、週刊誌にありそうなスキャンダラスなネタが満載で、一見面白そうだが、小説として熟成しているかというと、そうでもない。

誘拐時に発生したという火事が、希和子は身に覚えがないという伏線が、意外な展開になるかと思いきや何もなかったのも肩すかし。物語として、火事を起こす必要が果たしてあったのだろうか?

誘拐された子供の物語も、幼少時を誘拐犯と過ごし、実の家族や人との距離感に悩み、克服する話にしてはどこか浅いし、内容も短い。
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旅で、日常と異なる場所で、誰かとすごく楽しい思いを共有する事があると、その景色や空気や楽しかった気持ちが鮮やかに残る。

この本を読んだあと、それを思い出した。

あらすじは、小学5年生のハルが、長く会っていなかった自分の父親に「ユウカイ」されていろんな場所を放浪する、というもの。どうってことはない話だ。
この話がすごいのは、そのどうってことない話の中にちりばめられた、ハルの「気持ち」の描写だ。

直木賞受賞作の「対岸の彼女」同様、実にカンタンな言葉で誰もが身に覚えのある気持ちを書くので、読者は思わず自分の体験を思い出してハルの「気持ち」を文で書かれている以上に味わってしまう。

ハルはユウカイ中に、おとうさんの事を好きになる。(父親として好きになる、というより人として好きになるような「好き」なのだが)
ハルが体験したユウカイは、ハルにとっては後からも鮮やかによみがえる思い出になるのだろう。
人を好きになるって、その人と一緒に楽しく過ごすって、こういう気持ちだよな、と思い出す事ができる、とてもカワイイ1冊だ。

また、この話の季節は夏である。
強い陽の光、浮かぶ雲、木の濃い緑・・などなど、とてもわかりやすい夏の描写がたくさん出てくる。
ありふれた言葉なのに、陳腐ではなくたしかに夏をあらわし、夏を思い起こさせる。痛いくらいまぶしい昼間や、ぬるくてしっとりした夜。私は何度も、たのしかった自分の夏の思い出を思い出しながらこの本を読んだ。

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