日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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石田衣良の本は、実にわかりやすい、というか、安心して読める。
大衆的というのだろうか?決して安っぽいワケではないが、わかりやすくお手軽に感動できて、安心感がある。
真珠のように内側からの輝きを持つ40代の版画家の女性と、その輝きをわかる若い男の恋の物語。
しっとりと、甘い。

「自動車は男に似て、外見よりもなかにはいってくつろげる内装が重要なのだ」
とか。
洒落た文句が、かっこいい。
香り高い珈琲とか、シャンパンを片手に、うっとりと味わいたい作品。

主人公の女性に悲しい事が起きたときに、しかしその悲しみを引き起こす決断は、愛する人のためにと自分が正しいと思ってやったこと、ならばその悲しさは暗くはない。
というのが、大人っぽいと思った。
その時に作った作品は「明るい悲しさ」と評されたように、それはクリアで透明な悲しさ。
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池袋ウェストゲートパーク シリーズ6冊目。
リズミカルで軽快な文章が相変わらずで心地よい短編集。

池袋でトラブルシューターとして名を馳せてきた主人公マコトの元に、さまざまな依頼人が訪れる。
ヤクザ、ストリートギャング、警察にまで多彩なマコトの友人が丁度良くからんで、あっという見事な方法で片を付ける。
というストーリー展開はマンネリ化しているのだが、その過程で、『世の中にはいろんな人がいて、どんな人もそれぞれに幸せになる権利があるんだ』というこのシリーズのテーマ(だと私は思っている)がブレず、きっちりと、表されていて、またその表し方が、とてもいい物語になっていて、安心して読める。

「野獣とリユニオン」が特によかった。

加害者にも事情があって別な被害者だったとして、「被害者は加害者を許せるのか?」という、ありきたりなテーマ、そして「許した方がいいのでは」というありきたりな回答なのだけど、それを見せる物語がよくて、ストレートなストーリーで、あまりヒネリもないのだけど、単純な私はすっかりやられてしまった。

『ぼくたちはよく犯罪者のことを、あんなのは人間じゃないといういいかたをするね。もちろん、どうしようもないケダモノがいるのは確かだけど、みんながそうだとは限らない。ぼくを襲った相手が、理解不能なケダモノではなく人間だとわかれば、憎しみの気もちが変わるような気がするんだ』
『相手を人間じゃないものにして、恐れたり憎んだりし続けるのは、きっと自分の心のためによくないと思う。(略)憎しみの場所にいつまでも立っていたくない。まだあいつが憎いけど、それを越えていきたい』

すごくストレートで立派で感動的なこの台詞。
こんな台詞、いかにも物語風にキレイゴトなのだけど、このストレートさが、この物語によく合っていて、それを「嘘くせー」と思わせずに一気に読ませるのが、さすが。
主人公・ゆいかは、初めて見た芝居に感動し、その劇団に入るべく、大学を入学を機に上京。アコガレの劇団に入団を果たす。
演劇の聖地・下北沢を舞台に、ゆいかの入った、実力はあるのに人気がイマイチな弱小劇団が、だんだんと出世し、それに伴い8人の団員の間で、さまざまな人間関係のトラブルが起きる様子がテンポよく軽やかに描かれた、読みやすい作品。

貧乏だけど、情熱的な偏った大人たちをあたたかく語る、ゆいかの無垢な視点がよい。

今までゆいかの周りの同世代にとって、「夢」とはファッションの一部のごとく、「非現実的で、ちょっとセンスのいい」もの。「本当に叶えたいもの」ではなかった。
それが、劇団員たちは、1万円にがっつくような貧乏生活でも、演劇の夢を追い続け、「S・U・N.・D・A・Y・S、下北サンデーズ、ファイト!」と、劇団名のエールを恥ずかしげもなくやれてしまう。

入った大学でも、同級生達は、互いに控えめで、相手に失礼があれば「飛び上がるようにして謝るか、徹底して無視」という、希薄な関係。
対して、劇団員たちは、本気でぶつかり、愛し、人間同士の距離がとても近い、とゆうかは感じる。

小学生の将来の夢が「サラリーマン」などという現代に、夢があるって、好きな事って、こういう楽しいコトなんだ!それはお金で手に入るモノじゃない、とコトバで書くととても陳腐になってしまうことを、著者はこの作品で言いたいのかもしれない。

これを読んで、今まで芝居なんて見たことなかった人が、「芝居を見に行きたい」と言い出した。この作品が、どこまで実際の演劇界に近い真実を書いているのかはわからないが、読むことが、ふだん近寄らない世界への入り口になるのも、本の良いトコロ。
●悪性の脳腫瘍で余命1~2ヶ月の中年男が、腫瘍の頭痛で、意識だけが200年後の世界にタイムスリップし、自分の子孫の男の体に入る。その世界は、生物兵器に改良された恐ろしい致死率のウィルスが蔓延し、貧しい人々は地上に、富める者は高層タワーの最上階に住む階層社会。地上組とタワー組の争いも深刻化していくところ。

これは脳の病にかかった自分の妄想なのか?現実なのか?
主人公は、現在と未来を頭痛の度に行ったり来たりしながら、未来の世界を救うために、できる事を模索しはじめる。

未来の世界で特権階級だけが持つ、指輪型のAI(人工知能)が、顔が猫で体が人間の立体ホログラフィーとしてしゃべり、世界のあらゆるデータを蓄積している、という辺りがSFファンタジーらしくて楽しい。

「わたしの中には現存する人類の文学、音声、映像情報のすべてが保存されています。わたしはもち主の思索、意思決定、情報処理を補助するパーソナルライブラシアンです」
という感じ。

ハリウッド映画みたいに勢いがあって、続きが気になり、あっという間に読んでしまうが、冷静に考えると、最後はよくわからない方法で万事解決して大団円を迎えるあたりもハリウッドっぽい。

ドラマチックで、人間の残酷で身勝手な部分と、命をかけて他人を信じたり、見返りなしに人を愛したり、無限の可能性を秘めていたり、すごく美しい部分が、両方極端なくらい激しく描かれている。
それは、あとがきにある著者のこの気持ちなんだろう。

「人間の悪や残酷さを見たとき、ぼくたちはそれと同じ数だけきっとある光りと優しさに目をむける必要があります」

キャラ:◎

池袋ウエストゲートパークシリーズ2作目。
1作目同様、池袋で実家の果物屋を手伝いつつ、いつのまにかトラブルシューターとして名を挙げつつあるマコトが、様々な人と出会いながら、持ち込まれたトラブルを解決してゆく。頭をつかったり、拳を使ったりしながら。

シリーズ物の2作目以降は、登場人物を知った上で読み始めるので、登場人物には最初から好感を抱いて読める事が多い。
その分、この人どういう人?と集中しなくてもよくて、ストーリーを追うのに集中でき、かつ、ストーリーを追ううちに、すでに知っている登場人物のさらなる味がしみてきて、また好きになる、という読み方ができるのが、楽しい。

主人公、マコトは、相変わらず、クールなくせにお人好しで、どんな人ともフラットに接しながら、知り合いを増やしていく。この本の魅力は、多彩な脇役たちでもある。よくこれだけ多彩なキャラクターを考えて、しかも短編小説の1話に登場するくらいで、見事にその特異性、特異な理由、特異であるゆえの魅力、を描き切っていると感心する。

かつての小学校の同級生で女だてらに男に混ざって遊んでいたサチは、男になり、女の子をスカウトする商売やって、スカウトした一番人気の子に恋しているし。

いつも周りのものを数えていないと気が済まない少年とも知り合う。「数がほんとうで、残りのものはみんな見せかけ」「この店のメニューは全部で二十六品、全部頼むと七千八百六十円」といった調子。

池袋の情報屋、ゼロワン。ファミレスで日がな1日、携帯とノートPCを並べて情報を探している。「おれはいつも波立っているデジタル情報の海のなかに、きっとおれだけにむけられた聖なるメッセージがあると信じてる」

今回、いちばん私が気に入ったのは、70歳過ぎの「ジジイ」2人組、喜代治と鉄。
街を歩く女の子が平気で下着を見せおる、と喜ぶ下ネタ大好きスケベジジイの鉄に、マコトが、それは下着じゃなくてスパッツだと指摘すると
「にいちゃんは若いのう。下着だと信じれば、下着に見える。それだけで生きとるのが楽しくなるじゃろうに」

真理。

文:○ キャラ:○

うちにあるもの再読。初めての石田衣良作品。オールオール読物推理小説新人賞受賞、デビュー作でもある。

最初に読んだとき、衝撃だった。
すぐに「。」で区切られる短い文の羅列で、でも軽さと鋭さを感じさせる文体が、非常にスマート。

●池袋で、実家の果物屋を手伝う真島誠、19歳。彼の1人称で物語が進む。第1話では、友達のカタキをとるため、連続絞殺未遂魔事件に首を突っ込み、ユニークな仲間と力をあわせてみごと解決。
それが地元で評判となって、さまざまなトラブルの相談を持ちかけられるようになる、という短編集。このあと、シリーズ化されて、何冊か続きが出ている。

チームやらヤクザやら、風俗嬢やらがごったに存在する「池袋」という街のイメージづくりがうまい。

その中で、誠が頭と体と人脈をつかって事件を解決してゆくのが小気味いい。
誠は、「誰がどうやっても絶対に動かないなんか」があり、金でも権力でも女でも、そのドアは開かない。「冷たい」とまで言われる。
これに対し、「おれは冷たい人間かもしれない。だけど誰だって開けることのできない部屋をひとつもってる。そんなもんじゃないだろうか。」「おれの部屋、おれの独房。」

決して冷淡なわけではない。
池袋の街を救うために、自分はどうなってもいいと、アツくなったり、友達に対して親身になったり、実にやさしい。でも、決してゆずらない何か、自分の価値観を、持っている。
それゆえに、どんな人に対しても、フラットに接して、その良さを認められる。このクールで、広い心が、主人公の魅力。
だからこそ、誠の周りにいられる多彩な面子もこの本の魅力。
チームのヘッド、やくざ、ひきこもり、絵を描くのが趣味の少年、電波マニア、イスラム人、刑事・・・・。差別なく、ちょっと変なところも「面白い魅力」ととらえる、誠の感性がいい。

かなり前だが、長瀬智也が主人公を演じて、ドラマ化されていた。弟が見てたのを横から眺めたくらいだが、なかなか面白かった。原作の雰囲気がよく出ていたと思う。本を読んで面白ければDVDレンタルしてもよいと思う。

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