日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
技術バカでお人よしなダンが、親友と恋人に裏切られ、人生のどん底を味わうところから物語が始まる。初めは何だかわかりづらいなあ、と思っているのが、後半はあっという間に物語がすすんで、痛快な終わり方!前半ぼんやりしていたものも、全てが伏線だったのかと感心する。
スピーディな展開には、そんなのありか?というご都合主義も含まれるが、それも含めて、物語として、とにかく面白い。ハインラインの最高傑作と言われるのも納得。1956年に書かれたものだが、古臭さを感じない。

タイムスリップものだが、物語の主軸は、ダンの復活劇にあり、SFが苦手な人でも読みやすそう。

主人公ダンは、1970年から冷凍睡眠で2000年にタイムスリップする。
実際の2000年とは全然ちがうが、この未来の世界の様子も、リアルに描かれていて興味深い。
ファスナーの閉め方は新しい繊維の出現で劇的に変わり、言葉の意味が微妙に変わっていたり、労働者のために政府が認める余剰生産品があったり(作られてすぐにスクラップにされる)、人口肉が蔓延し、風邪が撲滅されていたり。

タイトルの「夏への扉」と、主人公の飼う猫のピートが、いい感じに物語にスパイスをきかせている。

物語の冒頭。1970年の冬。ダンとピートの住むコネチカット州の古ぼけた農家には12個ものドアがあり、ピートは少なくともどれか1つのドアは夏に通じているという固い信念を持ち、ダンに順番にドアを開けさせては失望する。しかし、それをどんなに繰り返そうとも、夏への扉を探すのを、決して諦めようとはしなかった。

そして、ラストでも。
『(略)ピートは、どの猫でもそうなように、どうしても戸外へ出たがって仕方がない。彼はいつまでたっても、ドアというドアを試せば、必ずそのひとつは夏に通じるという確信を、棄てようとはしないのだ。』

夏への扉。ダンもそれを求めて、ドアというドアを試し、何度も失望しながら、あきらめず、ついにはそのドアを見つけることができた。夏への扉を見つけたダンの最後のモノローグも、なかなかよい。

『ぼくは、時間の<パラドックス>とか、<時代錯誤>をひきおこすことを、心配などはしない。もしも、三十世紀の技術者がタイムマシンの欠陥を克服して、時間ステーションを設け時間貿易をするようになれば、それは当然おこってくる。世界の造物主が、この世界をそんなふうに造ったのだから、仕方がないいのだ。造物主は、われわれに目を、二本の腕を、そして頭脳を与え給うた。その目と、手と、頭脳とでわれわれのやることに、<パラドックス>などあり得ないのだ。』

『この世の真理がどうであろうと、ぼくは現在をこよなく愛しているし、ぼくの夏への扉はもう見つかった。』

『誰がなんといおうと、世界は日に日に良くなりまさりつつあるのだ。人間精神が、その環境に順応して徐々に環境に働きかけ、両手で、器械で、かんで、科学と技術で、新しい、よりよい世界を築いてゆくのだ。』
スポンサーサイト
長く、翻訳が読みづらい。そのため、途中で読むのが辛くなるが、ストーリーは、THE・娯楽小説で面白い。著者が「(読者は)一杯のビールを飲む金を節約して、私の小説を買ってくださるのだから、喜んでもらえるだけの内容じゃなくてはいけないと思う」というだけの事はある。


主人公は月に住む計算機技師マニー。

月には地球から流されてきた囚人やその子孫、移住志願者300万人がいくつかの都市に分かれて住み、女性比率が少ないために女性を大事にする文化だったり、福利厚生などはなく空気すらタダでそのへんにあるものではないという過酷な環境から生まれる「無料の昼食はない(無料では何も得られない)」という住民の意識だったり、という細かい設定が、物語の一部として自然に頭に入ってくるように描かれているのが秀逸。

たとえば、地球からの旅行者が、月の女性に自分から触れて、まわりの男から殺されそうになる場面がある。
主人公は旅行者に教えてやるのだが、まず月には法律なんかない。そんなものがなくても、最低限のルールを守れないような行儀がわるいやつは、過酷な環境下ですぐに死んでしまう。
女性の数が少ないから女性が絶対で、女性から誘ってホテルに行くことには誰も文句を言わない(その夫ですら)が、男が女に、女の許可なく触ったら、殺されても文句が言えない。

月は、地球連邦から派遣される月の行政府に支配され、月の人々は資源を地球に送り続けている。
このままだと月の資源はやがて枯渇し、食糧危機が訪れる未来を知った主人公とその仲間は、地球から独立すべく革命活動を開始する。

物語の主軸となるのが、月世界を管理する高性能コンピュータ「マイク」。
コンピュータにはもともと名前なぞないが、ある日、マニーが、このコンピュータに意識が存在することをただ1人気がつき、「マイク」と命名する。
このマイクのおかげで、またマイクに意識があることを政府側は全く気付かないおかげで、あらゆるデータを集め、シュミレーションをし、計算通りに実行することができ、革命は現実味をおびてゆく。

"ジョークを理解したい"というこのコンピュータが実に愛らしい。
革命の中心となる仲間、主人公の恩師「教授」の老練な駆け引きや、香港からきた知的な美人・ワイオの魅力もたっぷり味わえる。

1965年に書かれたものだが、悪い古臭さは感じない(コンピュータへの接続が常に電話だったり、プログラムを印刷するあたりは古臭いけど邪魔にはならない、むしろちょっと微笑ましくて楽しい)。

「興味を持っているのは、ビール、賭けごと、女、仕事」という月世界人たちをどう扇動し、何の武力も宇宙船すら持たず、はるか彼方の地球に対して独立戦争をしかけるのか?
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。