日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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この本は、読む前に、「ディックの本棚」というブログで、「たしかにすごい職人芸だけどあまり・・・」という書評を見てしまっていたので、その影響を受けて、「うーん、たしかに技はあるけど心がないような・・・?」という気持ちで読んでしまった。

伊坂幸太郎にとって、この作品は、技の練習なのではないだろうか?

登場人物たちの折り重なり、微妙に関わり、もつれ、わずかな奇妙な接点が次第に大きくなって、あるとき、全貌がぱっと開ける。その展開は、実に見事。
こういう技術は、この他の作品にも生かされていて、そしてこの他の作品は、心も入っていて、面白いものがたくさんある。

それにしても。よく、これだけたくさんの人物を同時に動かせるなあ、と感心する。
AとBは仙台へ同行し、その共通の知人Cは昔の同級生Dと、久々の再会を果たす。DとEはマンションで偶然出会い、Cの妻Fは、Gとハカリゴトをしていて、その途中にEと会う・・・とか、こんな感じで、場所をずらし、時間を前後させ、ちょっとずつちょっとずつ登場人物たちが重なるようにすすんでゆき、次々と謎が出てくるのがちゃんと別の場所で解明されて・・・、見事である。

また、他の作品「オーデュボンの祈り」の主人公のうわさが出てきたり、「チルドレン」でおきる事件が作中でニュースとして出てきたり、というリンクが見られる。
この作者の頭には、広大な世界が存在しているのではないだろうか?
その頭の中の世界には、いろんな人がいていろんな出来事が起こっていて、伊坂幸太郎はそれらを神のような視点で眺めていて、伊坂小説は、その世界の出来事の一部を切り取って作っているのではないだろうか。と思わず思ってしまうような。
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ストーリー:○

とても1回読んだだけではちゃんと読みきれない。謎が多すぎるから。
2回目こそ楽しめる本。
主人公のひらめきも小出しで、じわじわわかってゆく真相に読者は耐え切れず、先へ!先へ!となってしまう。
2回目に読んでやっと、ああ、これも!これも!伏線だったんだ!とわかる。

●仙台でコンビニ強盗に失敗して、パトカーで搬送中に事故に遭い、逃げ出して気がついたら「荻島」という島に連れてこられていた主人公。
仙台の沖に位置するこの島には、数千人が住むが、誰にも知られていない小さな島で、江戸時代から150年間、島の外と交流なく孤立して存在している、という設定。
主人公を島に連れてきたとどろきという男だけが島の外に出かけ、必要な物資を仕入れる他は。

島には、しゃべるカカシ「優午」がいて、何でも知っている、未来も見える。
桜という男がいて、悪事を働くと、この男に銃で撃たれる。桜による殺人は、全島民にルールとして受け入れられており、警察沙汰にもならない。

少しずつズレている島にいる、様々な人々。
ウソしか言わない画家、地面に寝転んで遊ぶ少女、雨の前に木に登る猫。
何故ウソを?何故地面に?何故雨がわかる??
それらにもちゃんと1つ1つワケがある。そういう小さな謎ときもあわせると、とても1度で読みきれない。

小さな謎の積み重ね。
そして物語の軸となる大きな謎として、カカシの優午が殺される。
なぜ。だれに。また、カカシは自分の死を予測できなかったのか?

そしてさらに大きな謎として、島に伝わる『この島には大事なものが、欠けている』という言い伝え。
『島の外から来た者が、欠けているものを置いていく』と。
外から来た主人公には、それがわかるのか?島民はそれを手にできるのか?

登場人物も謎も多い。よく1つの本でこれだけ惜しみなく出せるものだと感心する。また、その多さにも関わらず「えー、よくわからない・・・もーいいや」と放棄させない筆力がすごい。

コトバが洒落ているのも、放棄させない力の1つ。

「花を育てるのは、詩を読むのと似ている」
だとか。

また、ストーリーとは関係ない逸話がちりばめられており、それがまたイチイチ興味深くて気がまぎれるのもある。

『動物を食べて樹を削って、何十、何百の犠牲の上に1人の人間が生きている。そうまでして生きる価値のある人間が何人いるか。
「ゼロだ」と桜。』

キャラ:◎ ストーリー:○

グラスホッパーに続く、2作目の伊坂幸太郎作品。
コレは面白かった!グラスホッパーはイマイチだったけど、あそこであきらめなくてよかった!!

5つの短編。それぞれの中での起承転結がきっちりと書かれているだけでなく、5つの物語が連動し、ある物語で「なんだろう?」と疑問に思った事が、別の物語の起承転結の中でうま~い具合に明らかにされる、というつなげ方も見事。

この本の何よりの魅力は、破天荒な男、「陣内」。
わがままとも無神経とも言えるほど、自分だけの正義で動く男。友人いわく「あいつは常に何かを主張している」。
著者は、家裁調査官に取材したおかげで、当初考えていたのとちがう話になった、とあとがきで書いていたが、陣内の強引な、でも愛すべきキャラクターと、陣内が就く職業、「家庭裁判所の調査官」の仕事がうまくマッチして、陣内が発するこの仕事に対する考え方など、ストーリー運びにあわせて上手に披露され、面白い。

5つの短編は、年代が前後する。短編の順番と、その時の陣内の年齢、その短編の主人公(語り手)をまとめてみた。

タイトル陣内の年齢語り手
バンク18or19歳(大学生)陣内の大学の友人、鴨居
チルドレン31歳(家裁調査官)家裁の後輩、武藤
レトリーバー22歳(大学生)陣内の友人・永瀬の彼女、優子
チルドレンII32歳(家裁調査官)家裁の後輩、武藤
イン19or20歳(大学生)盲目の青年、永瀬

皮肉でコミカルな文が小気味よく面白くて、爆笑ではなく、いちいち「にやり」と笑ってしまう。

●銀行強盗の人質となり、緊迫した空気。陣内が見事な歌声でそれを和らげる。
「前に観た映画で、同じような場面があったんだ」と言うから、友人・鴨居も、当然、繊細で美しい映画なんだろうと思い、「何の映画だ」と訊ねると・・
「確か『死霊のはらわた』の二作目だ。『死霊のはらわたII』だったかな」

ここは、にやり、でしょう。



陣内の、無茶苦茶だけど、好ましいなあと思ってしまう名台詞の数々・・・。

●「これは絶対にうまくいく片想いなんだよ」
「世の中に『絶対』と断言できることは何ひとつないって、うちの大学教授が言ってたけど」
「『絶対』と言い切れることがひとつもないなんて、生きている意味がないだろ」

●盲目の青年・永瀬に、現金を手渡したオバさん。善意だけど、過剰な同情でもある。それを永瀬の彼女は憂鬱に思う。しかし、陣内は
「何で、おまえがもらえて、俺がもらえないんだよ」
盲目だからだろう、という説明にも
「そんなの、関係ねえだろ」「ずるいじゃねえか」
彼女には、この「関係ない」が心地よく響く。ここだけ読むとヒドい人物に見えるかもしれない。ヒドい事はヒドいのだが、でも、陣内は、いい。

家裁調査官についての記述。

●飲み屋で「少年法は甘い」「調査官は少年を甘やかしている」とからむオジさんたちに、陣内は、少年は一種類じゃないから、いちがいに決めつけるな、と反論。それでも
「駄目な奴はどうやったって駄目なんだよ。更生させるなんて、奇跡みたいなもんだな」と言われるが、
「それだ」「そう、それだ」
「俺たちは奇跡を起こすんだ」
「少年の健全な育成とか、平和な家庭生活とか、少年法とか(略)全部嘘でさ、どうでもいいんだ。俺たちの目的は、奇跡を起こす事、それだ」
・・・・かっこいい。
「そもそも、大人が恰好良ければ、子供はぐれねえんだよ」

そう言った陣内が
「奇跡?そんなもの起こるわけないだろうが。適当に少年の調査をして、報告書を書いて、どんどんやっていかないとキリがねえよ」とアッサリ転換。自分の発言に責任を持たないのは、日常茶飯事だ、というミニオチ付き。

だけど、陣内は奇跡を起こす。4編目の「チルドレンII」で、このセリフを実現する。
「チルドレンII」のこの奇跡と、5編目「イン」で、それより前の話で持たせられたある疑問の回答が示されるところが、いちばん好きだ。

2006年に源孝志監督により映画化されているが、DVDが出ている。映画観た方の感想見ると、映画も面白そう。



初の伊坂幸太郎。本屋さんでずいぶんとこの人の本を見かけ、人気があるのだろうと思っていたが、これまで縁がなかったのを、手にとってみた。
が、この作品にはそれほどはまらず。

●3人の男の視点で物語が進む。
・妻を殺され、復習を誓う元教師の鈴木。
・「罪と罰」を愛読する大柄な男、殺し屋「鯨」。この男を前にすると、人は何故か絶望的な気分になり、自殺してしまう。
・ナイフ使いの若い男の殺し屋「蝉」

視点が切り替わる時、場所が変わり、時として時間が逆行し、でも違和感なくつながり、この切り替えはうまいなあ、と思った。パキパキと切り替わって読みやすい。

鈴木がフツーの男の感性なのに対し、2人の殺し屋は、何人もの人を平気で殺したり、殺した人たちの亡霊が見えて苦しんだり、異常な気配。その対比が、視点の切り替えによって鮮やかになされていて面白い。

「押し屋」という殺し屋を追って、3人が交わる。
鈴木の妻の敵(かたき)である悪い会社も「押し屋」を追い、人が入り乱れる様や、登場人物の描き分けもうまい。
のだが、ストーリーが、結局なんだったのだろう?と最後に思ってしまい、あまり残らない。

タイトルはバッタの事で、「バッタが密集して暮らすと、その中に黒くて翅の長い凶悪なタイプが発生する」というのに由来する。
「押し屋」は言う。人間だってそうだ、と。

人々が密集して暮らす都会では、「穏やかに生きていくほうがよほど難しい」と。

簡単に人を殺せる殺し屋達が発生するのもしかたなし、という話なのだろうか?このバッタの話と、ストーリーがあまりうまく絡んでないような気がして、はまり切れず。期待が大きかった分、残念。
こんど、他の作品も読んでみよう。


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