日々の読書

日々、つれづれなるままに読んだ本の、感想おきば
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男と女に分かれる発生の仕組みについて、理科的でなく、ドラマチックな文章で語っていて、単にその仕組みだけでなく、その仕組みを解き明かそうと必死な研究者たちの歴史やドラマも見える書き方はよい。
が、語ろうとする内容が「男と女の分化の仕組み」についてのみで、これを一生懸命引き延ばして長くしている感があり、「生物と無生物のあいだ」に比べると、薄っぺらな印象。

内容的にはあまり関係ないが、プロローグにある、とある学会でのエピソードはとても素敵だ、と思った。

世界中から多数の研究者が集まる国際学会の基調講演を行ったスイスの重鎮学者が、開口一番、こう言った。

「科学の世界の公用語は、皆さん、英語であると当然のようにお考えになっていると思いますが、実は違います」

その学者はドイツ系スイス人で、英語もかなりドイツなまり、まさかドイツ語が公用語だなんて言わないだろうな、と皆が何を言うんだ?と次の言葉を待っていると、

「科学の世界の公用語は、へたな英語です。どうかこの会期中、あらゆる人が進んで議論に参加されることを望みます」

何とその場にふさわしい、素敵なスピーチ。
会場からは大きな笑いと拍手が起こり、このスピーチのおかげなのか、この学会では、どのセッションでもアジアから参加した、非英語民の活発な議論が目立った、とか。


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空間的にも時間的にも、人は全てを眺める事はできない、故に部分を切り取り観察して世界を理解しようとするが本当は全てのモノは一部分だけで完結するものはない、というテーマが軸。

これにからめて、科学界のドラマチックなスキャンダルや様々なエピソードを紹介され、飽きないし、テーマもぶれず構成もよい。が、そもそもこのテーマにあまり魅力を感じないので、読んでる間は面白いが、すぐ忘れてしまいそう。「生物と無生物のあいだ」の方がテーマ的に面白かった。

『この世界のあらゆる要素は、互いに連関し、すべてが一対多の関係でつながりあっている。つまり世界に部分はない。部分と呼び、部分として切り出せるものもない。そこには輪郭線もボーダーも存在しない。

そして、この世界のあらゆる因子は、互いに他を律し、あるいは相補している。
物質・エネルギー・情報を、やりとりしている。そのやりとりには、ある瞬間だけを捉えてみると、供し手と受け手があるように見える。しかしその微分を解き、次の瞬間を見ると、原因と結果は逆転している。あるいは、また別の平衡を求めて動いている。つまり、この世界には、ほんとうの意味で因果関係と呼ぶべきものもまた存在しない。』

という美しい結びは、さすが。

そうして、時間的な断面や空間的な部分を見ても、それは真実の姿ではないし、かといって全てを眺めることはできないとして、しかし、部分を観察してそれを関連付け・不足を補い、鳥瞰することを繰り返すことが、「世界に対する」という事であるとし、世界のリアルのありようを知るために、私たちは勉強しなければならない、というメッセージもなかなかよかった。
どうも、賛否両論がわかれる本らしい。
私は、面白かった。
生物の専門家が、生物と無生物を分ける定義が新しく示されるのを期待して読むと期待外れなようだ。
また、全く生物に興味がない人が何の苦もなく読み進められるほど簡単でもない。


内容のほとんどは高校の生物の教科書に載っていた内容だが、それを、情熱をこめて語られるのが楽しい。
高校の時、こんな風に「生物」を習っていたら、生徒達は、「生物」を面白いと思えただろう。
生き物の仕組みはすごい、と改めて思った。
発見した科学者たちの苦労話や努力やの人間味あるエピソードもあり、生物学者の研究生活ぶりがちらほら出てくるのも、まったく違う分野の世界を垣間見ることができて新鮮だった。

生物と、無生物は、どこで分かれるのか?
生物の定義とはなにか?

高校で習ったのは、「自己複製するもの」が生物、という定義。
この本でも、その定義は最初に出てくる。

その他に、著者が、生物の定義としてあげているのが、
・構成する分子が、つねに外から新しく供給され、入れ替わっている
・その中には、不可逆な時間が流れている
という2点。

2点目の方、著者の言葉で書くと、

『生物には時間がある。その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度、折りたたんだら二度と解くことのできないものとして生物はある。生命とはどのようなものかと問われれば、そう答えることができる。』

とてもロマンチックな書き方。
この人の文章は、自然科学のふるまいにロマンを感じて理系に進んだころの気持ちを思い出させる。
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